「ミャンマー料理が美味しくなくて腹が立ったから暴れた」 アスペルガー症候群と診断された犯罪者の苦悩
息子が『住所不定』になっていることを初めて知った母
アスペルガー障害。それが船山の受けている診断名だ。高揚した際に突飛な行動をとってしまう。これが原因で今まで何度も捕まってきた。感情をコントロールしたり、行動を抑えるための訓練を受けていたが変化はなかった。
本人は自分のアスペルガー障害に関して、
「今までの訓練で何かが変わったとは思ってない。どんな訓練をしたかの記憶もあまりない。自分の性格に問題があるのは自覚しているけど、正直、アスペルガーって何? って思ってる」
と話していた。
船山はこの事件のひとつ前に捕まった時はすでに訓練を受けていたが、逮捕・服役で訓練は中断された。出所後はそれまで住んでいた実家を離れて一人暮らしを始めたので、その後訓練はずっと受けていない。
同居していた母は出所後に家を出た船山を心配していたがどうしようもなかった。船山の服役中に祖母の認知症が進行してしまい、その介護に精一杯だった。祖母の介護をしながらアスペルガー障害を抱える船山を引き取ることは困難だった。
「不安ではあったけど、色んな人に相談しながら見守っていくと決めた。もちろん病気のことは心配してた」
しかしやがて船山は母との連絡を絶ち音信不通になってしまう。警察に今回の事件のことを知らされて行った面会の場で彼女は初めて船山が住所不定の状態になっていることを知った。
母は今後、船山を実家で生活させて訓練も再開させるつもりだと言う。
「本人を更正させるために、自分に出来ることは精一杯やっていきたい」
これまでもずっと精一杯やってきたはずだ。だが船山を更正させることは出来なかった。これ以上、母に何が出来るのだろうか。