「むしゃくしゃしてやった」 犯罪を犯した者が語るこの動機の裏には一体どんな心の葛藤があったのか 社会に叩きのめされた放火魔裁判
典型的なアルコール依存症です。酒が過ぎて警察の世話になることも度々ありました。それでも酒は止められませんでした。周囲に彼のことを考え心配してくれる誰かがいれば治療に繋げることもできたかもしれません。そんな「誰か」は周りには1人もいませんでした。
逮捕時、彼はお金をほとんど持っていませんでした。生活保護費を貰ったのは逮捕される前日です。貰った保護費はわずか1日で全て使い果たしてしまっていました。
検察官は彼の犯行に対して、
「こうやって『むしゃくしゃしたから』なんて言って火つけてまわってるような人がいたら、誰も安心して暮らせないでしょ! 私はみんなが安心して暮らせる社会が望ましいです。あなたのやってることはどうですか!」
と声を荒げて糾弾していました。
検察官の言う「みんなが安心して暮らせる社会」を脅かしたのは、「安心して暮らせる」場所をなくした男です。
彼はゴミ箱やネットに火をつけました。ただ、彼が「むしゃくしゃ」して燃やし壊そうとしていたものはそんな物ではなく、別の何かではないかと思えてなりません。(取材・文◎鈴木孔明)
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