「孤独のグルメ」聖地巡礼が大迷惑に…登場する板橋・洋食『アームロック店』の真実

「自称・板橋区の専門家」もしくは「板橋限定のグルメハンター」である私にとって、非常に嘆かわしいニュースが流れている。 20年近くも愛用している地元の洋食屋が、人気マンガ『孤独のグルメ』の影響で大迷惑を被っていると言うのだ。

[ 孤独のグルメ掲載店が「もう来るな」 “アームロック店”から悲鳴 ]

 テレビ東京系でドラマ化された漫画『孤独のグルメ』(原作・久住昌之、作画・谷口ジロー)。今年夏期の放送ではやくもシーズン3と安定した人気を誇っている。叙情派グルメ作品で、実在する飲食店をモチーフにした店が登場、とりあげられたところには、孤独のグルメファンが多く訪れている。

 しかし「頼むからもう『孤独のグルメ』ファンは来ないでくれ」という店もある。それは漫画の「東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ」の回に登場する、洋食屋とおぼしき店だ。

 同回の内容はこうだ。主人公が洋食屋で食事をしていると、店主がアジア系のアルバイトを怒鳴りちらしている。それを諌めたところ、トラブルに発展する。店主につかみかかられた主人公はいなしてプロレス技「アームロック」を決めるというもの。

「あの話に出てくるの店はうちだと、ネット上では広まっていますからねえ。去年ぐらいには孤独のグルメファンとおぼしき連中が、うちの店員にアームロックをかけようと虎視眈々と狙っているという(苦笑)」(同チェーン元関係者)

(後略)

[ 以上もぐもぐニュースより引用 http://mogumogunews.com/2013/11/topic_3755/ ]

 この店については過去何回か私の個人ブログで紹介したのだが、簡単にいえば神保町のような学生街にある、安くて美味しい洋食キッチンだ。都内には屋号こそ違えど、メニューや味が似通っているお店が何軒もあるのだが、一説によるとこれらはキンカ堂(池袋にあった衣料品のデパート) 食堂部のOBらが独立して作った店ではないかと言われている。40代以上の知人らに「思い出の洋食といえばキンカ堂のレストランだ」 と言われた事が何度かあるので、ハッキリと記憶に残るほど味の良いお店だったようだ。

 また、池袋の人気洋食屋ABCの社長や、その他のメニューや味のよく似ている洋食屋の店主達に出身を聞いてみた事もあったのだが、実際に「キンカ堂のレストランで働いてたんだよ」と教えて貰ったので、上の噂は半ば事実と考えていいだろう。

 さて、本題の「東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ」こと、板橋区大山の洋包丁である。

・洋包丁 大山店

http://ameblo.jp/oharan/entry-10803034284.html

 まず申し上げたいのが、洋包丁に行ってハンバーグを頼んでいる時点で素人である。 この店でまず頼むべきはからし焼きか、ポーク焼き肉のタレ焼き、ないしはスタミナである。着席と同時に 「からし焼き、ライス大盛りで」 と頼めてこそ立派なメタボだと思う。ちなみにからし焼きとは、豚肉の薄切りを炒め、(多分)ニンニク・白ワイン・塩・大量の胡椒で味を付けた超ジャンクフード。胡椒の刺激で辛味が付いているため 「からし焼き」 という名称になったのだろう。これ1皿で白米2合は余裕で食べられる味である。付け合せのカレー味のスパゲティもチャームポイントだ。また定食なのですべての料理に具だくさんの豚汁が付くのも嬉しい。

 また本当に余談中の余談になるが、マンガでバイトの外国人留学生が電話注文を受けていた 「ジャンボ」 は、豆腐と豚肉を甘辛いタレで炒めたヤミツキ満腹メニューである。実は板橋区大山の(ほぼ)となり町である北区十条・東十条・赤羽の一帯では、こちらを 「からし焼き」 と呼び、十条民にとってのソウルフードと言われているのだが、洋包丁では上に挙げた豚肉の胡椒焼きがからし焼きですのでお間違えなく。

 順調に脱線を繰り返しているが、いい加減に洋包丁のスタンディング・アームロックの件に移ろう。あの形のアームロックといえば、年配の方は高専柔道の強豪を思い出すだろうし、プロレスファンならば藤原喜明や桜庭和志の名前が挙がるだろう。だが、試合であの形でズバリと決着したといえばリングスのヴォルクハンである。またヴォルクハン式のスタンディングアームロックは、マンガ版よりもドラマ版の方が形が近い。

 さて、どうしてこのように何度も何度も話を取っ散らかせているか正直に明かすと、あの感じの悪い店主の元になったであろう接客オペレーションのオの字も出来ていない店主というのが、実際に大山店に居た時代があったからである。

 ソースにした記事にあるように、今は店主も変わって、毎日常連客らで満席状態の人気店なのだが、中には孤独のグルメを片手にやって来る客もいるようで、そうした客に対して現在の店主が 「それはフィクションですから」 と注意せねばならない状況も多いという。

 ここはキッチンスタイルの洋食屋だけに、調理はほぼ店主ひとりで回し、他に接客の女性が1名(ピーク時は2名)いるだけなので、目に余る迷惑行為は店だけじゃなく他の客にも迷惑になる。下手をすると他の客との間で揉め事になったり、警察沙汰になる可能性すらあるので、訳の解らない幼稚なマネは絶対に止めて欲しい。(これは洋包丁に限らずですが!)

 だがしかし、あのモデルになったと思われる店主が実在したのもまた事実だから困る……。私自身も20年近く前に何度も何度も店主がバイトを怒鳴り散らしたり、蹴飛ばしたりする場面に遭遇したし、この件に関しては他にも証人がいる。それが誰かと言うならば、おぎやはぎの矢作氏だ。

 おぎやはぎがとあるTV番組に出演した際に、昔よく通っていたお店として洋包丁大山店が紹介されたのだが、そこで矢作氏は開口一番 「ここはいつ来ても殺伐としてる店だったんですよ」 と、思い切りケッフェイ(プロレスの隠語)からぶっ込むという荒業を見せてくれた。

 また、孤独のグルメの原作が最初にブームになった頃に、私がブログに書いた洋包丁の記事を原作者の久住氏にご注進した人がおり、その際に久住氏とやり取りさせて頂いたところ「ネットって怖いですね、誰が何を知っているか解らなくて」 といったお返事を頂戴した。 そこで久住氏はお店に悪い影響が出る事を危惧してらっしゃった事を付け加えておく。

 という訳で、洋包丁大山店に、マンガにあるような嫌ぁ~な店主が在籍していた過去があるのは事実ですが、とっくの昔にその店主は居なくなっており、今では地元民でごった返す超人気の洋食屋さんというだけです。値段を抑えたキッチンスタイルの洋食屋さんって、人件費がかけられないし、客の回転率が命なので、絶対に店の迷惑になるような行為は止めてください。

■洋庖丁 大山店

住所:東京都板橋区大山町8-8

TEL:03-3937-1188

営業時間:11:00~22:00

定休日:金曜日

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Written Photo by 荒井禎雄

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孤独のグルメ (扶桑社文庫)

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