コオロギの唐揚げ
アジアを旅していると"奇食"に出会うことが多い。
先日、タイの田舎で象使いの取材をしていたところ、現地の方々が昼食に招いてくれた。出てきた料理は煮豆とキノコの揚げ物......かと思いきや、豆に見えたものはコガネムシで、キノコに見えたものはセミの幼虫だった。前者は塩ゆで、後者は素揚げ。ゆえに姿かたちはそのまんま。地元のおやじたちは、皿にこんもりと盛られたそれらのおかずをスプーンで豪快にすくい、白米と一緒にむしゃむしゃと食べていた。
「さあ、どうぞ」
差し出された「茹でコガネムシ」を前に、私は覚悟を決めた。現地の方々と同じように、スプーンに4~5匹のせて口に放り込み、がりりと噛み砕いた。ほんのりと塩が効いて、どことなくポップコーンみたいな風味であった。セミの幼虫はちょっと土臭かったが、これもまた独特の香ばしさがあり、予想外に美味かった。脚が歯に引っかかるのには往生したが......。
ラオスでも数々の奇食に出合った。その中でも極めつけが「牛の胎児スープ」。その名の通り、牛の胎児を煮込んだスープなのだが、調理の際に牛の腸の内容物を用いるため、別名「ウンコ煮」とも呼ばれている。味はまさにウンコ......と言いたいところだが、牛のウンコを食べたことがないから分からない。草っぽい風味だったことは確かだ。
セミの幼虫
子牛のウンコ煮
山羊の陰茎
ラオスでは他にも「ブタの金玉」と「山羊の陰茎」も食べた。どちらも不味くはなかったが、いちど食べたら十分という感じ。ただ、翌日の朝勃ちは尋常じゃなかったから精力源としての効能はありそうだ。
私が唯一、食べることができなかったのは、カンボジアの奥地で遭遇したサル肉。ラタナキリ州の集落で、燻されたサルが木の枝に何匹もぶら下がっているのを見たときはショックだった。その姿は人間のミイラにそっくり。話のタネに味見してみようとも思ったが、どうしても「共食い」のイメージが払拭できず断念した。
それぞれの地域には、それぞれの食文化がある。日本ではゲテモノとして扱わる食材でも、その土地では貴重な栄養源として人びとに親しまれている。そういう異文化に接し、未知との遭遇を楽しむことが旅の醍醐味だと思う。
【関連記事】欧米で続く目撃例...空に浮かぶ「謎の十字架」は人類への警告か!?
Written Photo by 久米雷蔵