松本人志にめちゃくちゃウケた三又又三の秘芸 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』(2)

町山:あと照英さんも面白かった!


博士:照英さんは何がすごいかっていうと、今は、もう日本にいるけど、昔、『水戸黄門』で役をやって以来、自分の自意識の中で、小さな世界に自分は居てはならないってことに駆られて一年中、世界中の秘境を冒険しているという……。特に北極クマとの死闘は見ものですね(笑)

町山:『水戸黄門』のレギュラーを蹴ったんでしょ~。

博士:そうです。町山さんはお気づきかもしれないけど、実はこの本のベースの中にあるのは開高健なんです。
まず開高健の本を全部読んで、前半、照英さんは『オーパ!』の躁的な冒険の世界。最後の方は開高健さんの『闇』シリーズの鬱々とした世界を再現していて。表現や描写のトーン全体もそこから引用してるんだけど。正直、開高健に捧ぐって気持ちです。
これは偶然なんだけど、今、いとうせいこうさんが「国境なき医師団」について世界中を取材しているんだけど、それが不思議でね。
この本を書いているときに、東京体育館で『いとうせいこうフェス』って大規模フェスがあって、ボクも漫談で出演したんですけど、そこに向けて、せいこうさんの人生を解き明かす20万字年表を作ったから(笑)。

町山:迷惑だよ(笑)。

博士:本人の了解を得てやったの(笑)。それこそ、『藝人春秋2』を書きながら、一方で『メルマ旬報』の年表仲間と、いとうせいこうさんの年表をずっとやりつづけたから。
で、せいこうさんに聞いたの、「仕事でもないのに、あの国境なき医師団に随行するのは何のための行為ですか?」って。そしたら「開高健だよ!」って。最近の作家が外に飛び出していかないっていうことに対して反発していて、その行為自体は開高さんへのオマージュでやってる、って。『オーパ!』とかベトナム戦争に従軍した頃の開高さんの世界なの。
だから、この本は、せいこうさんの影響も強くて、それで、町山さんと並んで、いとうせいこうもスペシャルサンクスで入っている。

町山:もーまったく。博士は興信所みたいな人だからね。

博士:そうそう。基本的には対象に向かって調査、下調べを繰り返す。マメだけど、やはり人としての器が小さいんですよ。

町山:本家のジェームス・ボンドなんて全然調査とかしないですよ。敵の基地にいきなり行って、「名前は?」って聞かれて「ボンド、ジェームス・ボンド」って本名言っちゃう。全然スパイでもなんでもないですよ。

博士:「ボンド、ジェームス・ボンド」って、あれ、映画で必ず言うじゃないですか。

町山:定番。本名を言うスパイなんているか(笑)

博士:だけど、その口調は本でも引用していて、俺が登場するところから「博士、水道橋博士です」って言うんですけど、すごい唐突なんですよ。

町山:ははは。

博士:だから校閲さんも「何でこうなってんですか?」って。それはジェームス・ボンドの名台詞だから必要なんですって、いちいちパロディを説明してさー(笑)。