シリーズ「ネットウヨク論」第3回:「ネット上の情報はまず疑え 補足:まとめサイトの落とし穴2」
「まとめブログの正体 その3」
ここで少しジャンルを変えて、2ちゃんねる系のまとめサイトではなくエログ業界について解説しよう。エログとは、エロネタを専門に扱うまとめブログである。いまどきの成人男性ならば、誰しも1度くらいお目当てのエロ動画・画像を追い求めてあちこちたらい回しにされた経験があるだろう。(結果的にワンクリック詐欺に引っ掛かるまでが1セット)
少し思い出して欲しいのだが、こうしたエログをあっちこっち飛び回る内に「な~んかデザインが似てるな」と感じた事はないだろうか?それもそのはず、それらのエログは1人が複数のブログを管理して収益を得ているのである。中のシステムは様々だが、エログ管理人集団と出会い系業者の飲み会に誘われて遊びに行った事のある私が言うのだから、紛れもない事実である。
構図としては、出会い系などのアダルトコンテンツを運営する会社がある。そしてその会社の広告を商材として扱う広告代理店がある。ブロガーは取りまとめ役がハッキリしている場合が多く、その下に暇な学生や無職で金に困ってる人間などがぶら下がっている。彼らはほぼ自動化されたプログラムを使ってネタを集め、自身の管理するブログ群に記事として反映させる。そこに代理店を通して広告を掲載し、エロネタに釣られて集まって来た読者が引っ掛かるのを待つのだ。
一昔前は、これらは完全に「エログの領分」と決められていた手法だったのだが、いつの間にか代理店がこうした商材を2ちゃんまとめブログにも卸すようになり、垣根が壊されてしまった。
前回は2ちゃんまとめブログ業界を揺るがせた2012年問題を取り上げたが、同じ2012年に”本来はエログの領分だったはずの手法”を、2ちゃんまとめブログが取り入れるという大問題が発生したのである。発端は、広告とは思わせない「擬似まとめ記事」を使った、出会い系の広告が問題視された事にある。
それがいったいどのような内容だったかと言うと、普通の2ちゃんねるのスレッドをまとめた風のデザインで「○☓という出会い系を使ったら処女のJCとヤレた!」といった書き込みを並べまくるというもの。
少しネットに慣れた人間ならば絶対に引っ掛からないようなセンスのない文字列ではあったのだが、経験値の足りない人間はコロっと騙され、広告主である出会い系に登録してしまったようだ。この騒動を受けてまたも西村博之がアフィブログに対し「騙し広告でいくら収益を得たのか、どんな業者から依頼を請けたのか明かせ」と警告アナウンスを発し、あるまとめサイトはこの広告によって1ヶ月で約25万円の収入があった事を明らかにした。1件成約につき1,500円のバックというから、このブログによって騙された人間が1ヶ月に160人以上いた計算になる。
まとめブログとは、ネット上の無数の情報の中から、自分の好みに合った情報だけを抜き出して読ませてくれる便利な存在ではあるが、その便利さ故に知識・経験の足りない人間も数多く利用する。そのため、この出会い系広告問題のように「それに引っ掛かる方が難しいだろ!」というようなネタでも金になってしまうのだ。
キレイに使えば便利なまとめブログではあるが、今では”ゲスがバカを釣るツール”として機能している一面もあるという事は覚えておいて欲しい。
「まとめブログの正体 その4」
さてさて、2ちゃんねる側の対応により絶滅に追い込まれるかに見えた2ちゃんまとめ系のアフィリエイトブログだが、多くの業者が絡んでいるため止めるに止められず、現在でもルールの隙間をぬって涙ぐましい手法でお金を作っている。
その中の一つが「自分でスレ立てして(例えば嫌儲板)、一回外部への転載が可能な板(例えば旧ニュー速板)にコピペして、それを自分達の一派が運営するアフィブログに転載して、偏向・捏造当たり前な見出しを付けて人を集め、広告収入を得る」という手法である。方法論的には規制される以前の使い古された内容なのだが、アフィブログ業者は今でも確実に人が集まる(=金になる)ネタを思い付いた。それが「ネトウヨが好きそうな嫌韓ネタ」である。
00年代後半辺りまでは、ネトウヨ系の情報サイトといえば「○○の会」といった名称のネトウヨ団体に属する人間が、個人として怪文書チックな記事をアップするのがお約束だったのだが、今ではネトウヨの主な情報源はまとめブログだ。この連載の最初に述べた”確証バイアス”に凝り固まったネトウヨは、韓国・朝鮮・中国を悪く言えるネタがあれば電灯に群がる虫かのように集まって来て、「韓国ガー!中国ガー!」とSNS等で勝手に情報拡散をしてくれる。すると、ゲームやマンガのネタを扱うより効率よく読者を集められ、安定して広告収入を得られるという寸法だ。
そしてより効率よくネトウヨの目に留まるために、アフィブロガー達は「韓国経済が遂に破綻!」「朝鮮工作員が大久保でテロ敢行!」といった具合に、これでもかと刺激的な見出しを考える。彼らの見出しが事実とすれば、これまでに韓国は甲子園出場の常連校かのように滅亡を繰り返し(2年ぶり8度目的な)、日本はとっくに中国に占領されているだろう。
韓国憎し、中国憎しという感情が抑え切れず、知性を捨て去ってしまった連中には、このような注意を促す声は絶対に届かない。ネトウヨある限り、悪質なまとめブログは「愛国の戦場(笑)」として機能し、アフィブロガーのお財布と業者が潤い続けるのである。
そんな餌になりたくなければ、まずはネットの情報を疑おう。当然この記事だって疑って読もう。そして自分の頭で情報をどう咀嚼すべきか考えよう。それさえ正しく出来れば、とりあえず「ネトウヨ(笑)」と蔑まれる存在にはならずに済む。
本当に日本という国を愛し、また国を憂いているのであれば、まずはアナタ自身がネットごときに騙されない賢き日本人になるべきである。
Written by 荒井禎雄
Photo by imagerymajestic
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