シリーズ「ネットウヨク論」第2回:「ネット上の情報はまず疑え 補足:まとめサイトの落とし穴1」
「まとめブログの正体 その1」
2012年に、それまで隆盛を誇っていたアフィリエイトで儲ける事を目的とした”2ちゃんまとめブログ業界”に激震が走った。2ちゃんねる(西村博之)から「転載禁止」の処置が言い渡されたのである。
あまりにも長くなるので何があったのか手短にまとめるが、多くの2ちゃんまとめ系アフィリエイトブログは、2ちゃんねるのスレから一部分を抜き出し、人目をひくようなキャッチーな見出しに付け替え、それを掲載(+情報拡散)する事で読者をかき集め、アフィリエイト収入で儲けていた。この”レスを抜き出す”と”見出しを付け替える”という工程の中に、捏造とも受け取れる悪質な手法(※)が見受けられたため、大本の2ちゃんねるにも批判・クレームが相次ぎ、無視できなくなったのである。
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※例
元となるニュースに「(1)全国に流通している有名商品の原材料の供給元のひとつから、基準値を超える放射線量が検出された」「(2)しかし企業はすでにこの供給元からの仕入れをストップしており、対策済みである。」という情報があったとする。これが2ちゃんねるのニュース板に取り上げられた場合、そのスレには放射能を恐れるヒステリックなレスも、冷静に対策が済んでいるなら問題なかろうというレスも混在した形になる。
だが、とにかく人目をひいてPV数を稼ぎたい(=金が欲しい)アフィリエイトブロガーからすれば「安全対策済みです」では面白くない。ではどうするかというと、さも放射能に汚染された商品が全国に流通しているかのように都合の良い部分だけ切り取って捏造するのである。
上の例で言えば、元ニュースの(1)の部分だけを取り上げ、(2)の部分は無かった事にし、見出しにも「日本\(^o^)/オワタ 有名な○☓が放射能まみれだった件について」といった文面を載せ、更には2ちゃん住民のレスも放射能に怯える内容だけを抜き出すのだ。こうすると、そのまとめ記事の中では「日本中が放射能に汚染されてコンビニの商品すら安心して買えない状態」という事になってしまう。
これが単にアフィリエイトブロガーが小遣いを稼ぎたいだけならばまだしも、もっと筋の悪い人間が暗躍して株価操作に使っていたとしたらどうだろうか?ごく少数の悪意のある人間の恥知らずな行為によって、大勢(上の例の場合は取り沙汰された企業の社員やその家族)が人生を狂わされる可能性まであるのだから、誰かが社会的な制裁を受ける事態にまで発展しても何ら不思議ではない。
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このような悪質なサイトの存在は、リテラシー能力の足りない利用者を容易く洗脳してしまうため、何回かに分けて詳しく手口を解説していく。最後まで読んで頂ければ、きっと「なぜネット上の情報を疑ってかからねばならないのか?」が解るはずだ。
「まとめブログの正体 その2」
2012年に起きた2ちゃんまとめサイト業界の激震は、大本である2ちゃんねる内の勢力図を塗り替える程の大問題となった。
発端は大手まとめサイトの”ステマ騒動”である。とあるアニメ制作会社がグッズ通販に使っていたamazonのIDが、大手のアニメ系まとめサイトが使っていたIDと同じだったのだ。ここから「アニメ会社と提携して経営している商用サイトではないか?」といった疑念が生まれたのだが、情報速度が早いはずの有名2ちゃんまとめサイト群がこの件に限って何故か口をつぐみ、また独断で関連する追求スレを削除して回る2ちゃん削除人が現れるに至り、2ちゃん住民の猜疑心が極限まで高まり大炎上してしまったのだ。
この炎上騒動の中で、ある2ちゃんねる運営スタッフが「2ちゃんスレのコピペで儲けるアフィリエイトブロガーではないか?」という疑惑が生じる。これにより「2ちゃん運営とアフィブロガーが同一人物なら、そりゃ規制もされないし、都合の悪いスレは削除されるよね」というカラクリが浮かび上がり、それまで使っていたニュー速板から、転載禁止ルールが適用されているニュー速(嫌儲)板へ住民の大移動が行われた。殆どの住民が移動した後の転載可能なニュー速板は、実質的に人のいない廃墟のような状態となり、代わって転載禁止のニュー速板は2ちゃんねるでもトップクラスの利用者数となった。
話はこれだけでは終わらず、2ちゃんまとめブログについて調べ回っていた有志が、大手サイトのひとつが個人ブログではなく、複数スタッフで執筆している企業が運営する商用サイトである事を突き止める。これにより新たなステマ騒動が巻き起こり、2ちゃんねるを金に替える業者の存在と、その手法が白日の下に晒された。と、ここまでが2012年の1月中に起きた出来事である。
そして2012年の6月に、西村博之による「悪質なアフィリエイトブログに対する2ちゃん転載禁止令」が言い渡されたのだが、それけでは終わらず、ライブドアやFC2といったサーバ運営社に対し「当該ブログには広告を載せないように」という警告が発せられ、問題となったアフィブログは徹底的に追い込まれる事となった。(続く)
Written Photo by 荒井禎雄
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