シリーズ「ネットウヨク論」第8回:インターネットで情報収集する際の基礎知識 「ネット上での声の大きさには理由がある」

辛口すぎていつ大炎上するかおっかなびっくりな当シリーズだが、今回からは書き方の難しい “病巣” の部分に切り込んで行こうと思う。

さて、皆さんがネット上に文章を打ち込む際に、1回につきどれくらいの時間をかけているだろう? Twitter等のSNSや、2ちゃんのようなBBSであればさほど時間は必要ないだろうが、ブログにある程度の量の文章をアップする場合、気付いたら1~2時間くらい経っていたなんて経験があるはずだ。

人間の文字入力スピードなど、いくらブラインドタッチに長けていてもたかが知れているのだから、貴方が1時間かかって打ち込む文章ならば、他人も同程度の時間をかけて入力していると考えるべきである。

では、次にこう考えていただきたい。貴方がネット巡回中に何らかの長文(この記事でもいい)を見掛けたとして、果たして1時間も2時間もかけてそんな長文をネット上に記したいと思うだろうか?

私はこの連載を仕事として請け負っているから、調べ事に小一時間かけ、内容の整理整頓に更に小一時間かけ、実際の執筆にも1時間かけといった労力も苦にはならない。ただそれは「見返りがあるから我慢できる」というだけの理由である。全く見返りが期待できないのであれば、こんな長文を書いている暇があったら近所の行き着けの飲み屋にしけ込みたい。

こう言うと当たり前の話でしかないのだが、実際にネット上の情報・ニュースという形で文章に触れると、どうしてもこうした当たり前の考え方が抜け落ちてしまう。この連載で何度か書いた事だが、その情報を多少の労力を払ってでもアップしたいと思った人間がいたから、貴方はその情報を目にしたのだ。「情報がそこにある」という事実の裏には、必ず「その情報を公開した人間の思惑」が秘められているのである。しつこいようだが、絶対にこの事だけは忘れてはならない。

ではこの前提を踏まえた上で「ネット上での声の大きさ」について考えてみよう。ここで言う声の大きさとは、単純に「その人の発言数の多さ(=書き込み件数の多さ)」であるとお考え頂きたい。(波及力・拡散力となると話が変わってくるので、ここでは忘れて下さい)

あるところに「愛国!護国!憂国!」と、子供が言葉を覚えた嬉しさから無理に使い倒している的な記事を毎日更新し続けているブログがあったとしよう。そのブログはほぼ毎日更新しているというのに、毎回のように文字を打つだけで1時間くらいかかりそうな長文がアップされるものとする。

じゃあそいつの本業(肩書き)はなんだと思う?

打つのに1時間かかる文章であれば、下調べやら何やらで最低でもその倍は時間を費やしているはずだ。仮に作業開始から記事のアップまでに2時間かかるとして、毎日毎日ブログの更新に2時間もかけ続けられる人間とは、いったいどういう人種なのだろう?

こうした疑問から「ネトウヨ=ニート説」が展開されたのだが、一部分では当たっているものの、残念ながらそれが全てではない。まず第一に、そのような声の大きさを持つ人間は「ネトウヨに限らない」からだ。

もっと具体的にハッキリと指摘してしまうが、ネトウヨ的な手法でしつこくアジテーションを繰り返すという方法論の元祖は誰だっただろう?  当時はまだネットこそなかったものの、「我々の斗争はぁ~!」と、あちこちで人の迷惑を考えずにテンプレートをがなり立て、アジビラを配って回っていたのは右翼だったっけ?(すっとぼけ) 

ではそうした「革命斗争」を続けていた人間は、どんな社会人だったであろうか?  私の地元の板橋区では、数年前に「潜伏中の元連合赤軍の老婆(生活保護受給者)がスーパーでさきイカを万引きして逮捕」という、四方八方にねじくれた心温まる事件が起きたのだが、こうした事例を元に考えてみれば、「ネトウヨだから」という考え方が根本的に間違っていると気付かないか?

いささか極端すぎる例を持ち出してしまった気もするが、ネットで声の大きい人間には、大前提として「それだけやってりゃいい理由がある」のだ。どんな思想の持ち主かなど関係ない。何はさておき「それだけの労力を掛けられる状況がある」という点こそが重要なのである。

そうした人間は、引き篭もりニートで親のすねをかじっているのかもしれないし、何らかの政治的組織が食わせてくれているのかもしれないし、何だったら妙なカルト宗教の一味なのかもしれない。もしくは昔懐かしい総会屋に飼われているブラックジャーナリスト的な立場という可能性もある。普通に仕事をしているだけのライターというケースもあるだろうが、「真っ当な社会人である確率がかなり低い」のは確かである。一言でぶった切るなら「普通じゃない」のだ。

皆さんもネットを徘徊する際に様々な立場の声の大きな人間を目にするだろうが、彼らの主張を真に受ける前に、まずはこうした「どうして?」の部分を考えてみよう。そうした一手間を経てもなお信じるに値すると判断したならそうすればいいし、胡散臭いと感じたならば距離を取るべきである。

という訳で、最後にこんな暴言を吐いて終わろうと思う。

「ネットで声の大きなヤツの大多数は暇人か病人である」

(口が悪くてごめんね!)

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Written by 荒井禎雄

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ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて (g2book)

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