ネットの見出し「ノーバン」に釣られた「私」 新聞用とネット用とでこんなにも違うタイトルのつけ方
すると翌日。産経新聞をくまなく探したらありました。かなり小さい記事でしたがありました。
その見出しは、
『豊田理化学研究所フェロー、条例違反疑い逮捕』(12月8日)。
見立ては当たっていた。「日本学術会議会員の男」という見出しはつまり「ネット用」だったのである。
なぜこんなことになるかと言えば日本学術会議ネタは10月から対立が激しいから。もともとは菅義偉首相が新会員候補6人をなぜ任命しなかったかという話だった。いや、今でもそれは変わりない。説明がないのだから。
しかしいつの間にか「組織のあり方の問題」を批判する論調が出てきた。なので「あり方」を問いたい人からすれば産経師匠の見出しは最高だったのである。産経師匠にも「ほらほら、学術会議の会員がこんなことしてるぞ」という行間がある。
今回逮捕された人の肩書や属性は「豊田理化学研究所フェロー」「日本学術会議会員」のほかに幾つもあるはずだ。土地柄からすれば「中日ドラゴンズファンの男」かもしれないし、世代からすれば「宮崎美子カレンダーを買った男」かもしれない。
「宮崎美子カレンダーを買った男、条例違反疑い逮捕」という見出しもその新聞が狙うお客次第ではあり得たかもしれない。その媒体はどの肩書を使うのか、なぜその属性を選んだのか。各新聞を読む際に楽しみたい背景である。(文◎プチ鹿島 連載「余計な下世話」)
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