反射的行動で墓穴? デヴィ夫人ブログ・名誉毀損の深層~ネットウヨク論:番外編
タレントのデヴィ・スカルノさん(デヴィ夫人)が、自身のブログに事件と無関係な人物の写真を無断掲載して訴えられた裁判で、夫人に賠償を命じる判決が下りた。
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デヴィ夫人:ブログに無断写真 165万円賠償判決
いじめを受けていた大津市立中学2年の男子生徒が2011年に自殺した問題で、タレントのデヴィ夫人のブログに無断で顔写真を掲載され、加害少年の母と誤解されたとして、兵庫県宝塚市のスタイリストの50代女性が1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が17日、神戸地裁であった。工藤涼二裁判長は名誉毀損(きそん)を認め、デヴィ夫人に165万円の支払いを命じた。謝罪文掲載は認めなかった。
工藤裁判長は「加害少年の母と誤信させ、社会的評価を低下させた」と指摘。デヴィ夫人について「著名な芸能人で、表現行為には一定の社会的信用や影響力がある。何の裏付けもないまま写真を掲載して発信したこと自体、非常に安易で軽率」と述べた。(後略)
(毎日新聞WEB http://mainichi.jp/select/news/20140218k0000m040063000c.html)
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[補足] 大津イジメ事件とは
2011年10月に大津市の私立中学に通う男子生徒がイジメを苦にして自殺した事件。事件の前後に学校や教育委員会の臭い物に蓋体質による隠蔽が発覚し、大きな社会問題となった。
さて、デヴィ夫人のブログといえば切れ味の鋭さで有名だが、今回は全く無関係な人間の写真を「イジメ加害者とその母親だ」と受け取れる文章と共にアップしてしまうという大失敗を犯した。
デヴィ夫人は判決を受けて「写真の女性が加害者の母親だとは言っていない」などと反論し控訴する構えだが、問題のブログ記事を読んでみると……。
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(デヴィ夫人のブログより引用)http://ameblo.jp/dewisukarno/entry-11298935138.html
とんでもないのが 母親の K・K 。
この件に関して 母親自身も
「あんたの子供は死んだけど、 自分の子供は 生きていかなくちゃいけない。どうしてくれるんや!」
「冗談真に受けて ホントに自殺するなんて こっちが被害者だわ」
などという ふざけた発言をしています。
さらに 校門前で 「ウチの子は被害者です」 という ビラまで配る始末。
この親にして この子ありとは まさにこの事。
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こうした文面に加えて原告女性の画像をアップしていた(現在は削除)のだから、さすがにこれは反論の余地がないだろう。しかも当時はこの記事のイニシャルの部分は実名だった。義憤に駆られての事とは思うが、無関係な人間の人生を台無しにするようなミスをしてしまったのは事実である。
今回のデヴィ夫人の失敗は、典型的な「祭りに乗っかってヤラかしちゃった」ケースであり、つい先日東京ブレイキングニュースに掲載されたこの記事の内容とも被る。
『大量の逮捕者も? 2ちゃんねるまとめサイト連続炎上騒動のウラ側』
動機が義憤だろうと私怨だろうと憂さ晴らしだろうと、法に触れるような言動をしてしまってはそれ相応の報いを受けさせられて当たり前だ。何事か事件が起きて、石を投げ付け放題な悪人が現れたとしても、反射的に公の場所(インターネット)で情報発信する事には危険がつきまとう。
「その画像」を「その意見」をネットにアップする前に、冷静に深呼吸でもして「このまま上げて大丈夫かな?」と考えてみよう。相手の肖像権に配慮しているか? 相手の名誉や信用を毀損していないか? そもそもアップしようとしているネタは事実だと裏が取れたのか?
「ブログやTwitterに自分の意見を書くのにそんな面倒な事はやってられない!」と言いたいひともいるだろうが、その前提からして間違っている。上記のような注意を払えないのならば書くな。 WWW(World Wide Web) という公の空間に載せるな。
一昔前は名誉毀損による賠償金額は、雑誌が被告になるケースでも100万円前後が相場だったように思うが、今では “ネットと名誉毀損の相性が良すぎ”増額傾向にある。今回のデヴィ夫人に命じられた賠償額も、個人のブログにアップしただけという点を考えれば、以前の相場よりだいぶ高い。100万~200万程度の金額はデヴィ夫人なら屁でもないだろうが、今この記事を読んでいる貴方はポンと支払えるだろうか?
ブログ・Twitter・2ちゃんねるといった場所は”公”である。不特定多数が閲覧できる可能性があるならば、そこはプライベート空間ではない。という事は、法律の文面を素直に解釈すれば容易く名誉毀損や信用毀損が成立してしまう。この点だけはくれぐれも用心して欲しい。
さてさて、この記事を「ネットウヨク論」の番外編としてお届けする以上は、最後にネットウヨク団体の構成員らがヤラかした実例も紹介しておこう。
2008年のある日、瀬戸弘幸(当時維新政党・新風副代表)、西村修平(当時主権回復を目指す会代表)、槇泰智、桜井誠(在特会代表)、黒田大輔(日護会代表)その他といった、ネットウヨク団体のオールスターキャストが勢揃いした街宣が行われた。場所は東村山駅とその周辺である。この時、街宣中に瀬戸弘幸が発したデマを鵜呑みにした面々が、自分達が敵と見做した駅前ブティックに徒党を組んで押しかけるという事件が起きた。
この街宣(及び襲撃)に参加したメンバーは、ネトウヨ業界ではそれなりに名のある連中なのだが、それが徒党を組んで無実の一般市民が経営する洋品店を襲うという意味のわからなさ。なんでもこの洋品店の店主を創価学会の工作員だと思い込んだらしいのだが、その店主は学会員でもなんでもなく、さらには過去に何件も裁判を起こし、自身の無実を証明している事を付け加えておく。
これが新風をはじめとする初期ネトウヨ団体が右派からも見放されるキッカケとなった『東村山・駅前ブティック襲撃事件』なのだが、この騒動には後日談がある。この日の参加メンバーらが”活動報告”として、この時の写真や動画を自分達の手であちこちにアップしたのだ。その”活動報告”のひとつが次の画像である。
ここに写っているのは、当日現場で取材をしていたジャーナリストの宇留嶋瑞郎氏と、とある人物なのだが、ネトウヨ連中は見ての通り彼らを創価学会の工作員だと思い込み、三色旗カラーで落書きをするという幼稚園児レベルのはしゃぎ方をしてしまった。
これに怒った宇留嶋氏が黒田大輔を訴え、黒田は仮執行で口座を差し押さえられるといった経緯を経て罰金が確定した。
この時のネトウヨ連中の浅はかさも、デヴィ夫人の失敗とまるで同じである。 また、祭りに乗っかって調子こいて大失敗する輩も同様だ。仲間内ではしゃいでいるだけならばまだしも、公の場所で情報(意見)を公開する場合は「社会の常識・ルール・法律」を考慮せねばならない。
ちなみに、上の写真で宇留嶋氏の隣に写っている”とある人物”は、調査中の “公安の中のひと”と思われるのだが、ネトウヨ連中は「自分達は正義」「だから自分達を監視・邪魔するヤツは悪者」というバカ過ぎるロジックによって創価認定した挙句に顔写真をばら撒くという暴挙に出てしまった。ヤツらは数年前からこんな事を積み重ねて来たのだから、そりゃマークされて当然である。
『キムチ好きは非国民か?「情報の記号化」が招く危険について:ネットウヨク論第13回』
この記事にも書いたが、記号化による盲目化の怖さがこれだ。「自分達は正義のひと」という記号だけでしか物を考えないから、批判の声を挙げる人間や、監視してくる人間は「正義の反対だから悪」と思えてしまう。「自分達は反創価である」という記号だけしか頭にないから、自分達に批判的な人間はすべて「創価学会の工作員」に見えてしまう。「見えない敵と戦う」というネトウヨの特性は、こうした記号でしか物を考えられない幼稚さに起因しており、それ故に一般常識とかけ離れた「仲間内でしか通用しないローカルルール」だけを基準に暴走してしまうのである。
各種SNSやブログなどは、携帯電話等から手軽に、反射的に、情報発信できる便利なツールではあるが、「反射的に使えてしまうからこその怖さ」が周知されているとは言い難い。自分が食べた料理の写真や飼っている犬の写真といった毒のない情報を公開するだけなら何も問題はないが、「他人との絡み」が生じる場合はくれぐれも用心しよう。「公の空間には公のルールが適用される」という点を絶対に忘れないで欲しい。
Written by 荒井禎雄
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