格闘の申し子・平本蓮 RIZIN大晦日大会でMMAデビュー 「俺は独りじゃない。皆も独りじゃない。ファンの皆と一緒に勝ちにいく」(インタビュー後編)
――そう言えば、YouTubeでゴンナパー戦の歓声はグッと来たっておっしゃってましたよね。
「ゴンナパー戦のときの歓声はすごかったです。そこで、俺は応援って一緒に戦ってるんだなと思ったんです。『応援されている』んじゃなくて、一緒に戦っていく。ファンと一緒に勝ち取りに行く感じですよ。『俺は平本蓮のファンやってるんだぜ』って、熱狂的な雰囲気を作りたいんです。コナー・マクレガーとかすごいじゃないですか。『アイリッシュの皆、やってやろうぜ』みたいな。あれが理想です。だから相手の身内とか相手のファンとかマジでどうでもよくて、大切なのは自分のファンだけです。
変な話、格闘技界のこの人に逆らっちゃダメだとか関係なく生きていきたいんですよ。俺はムカつくヤツにはムカつくって言うし、干されるとか知らねえよ、強けりゃいいんだよ、みたいな。しかも、こんなネット社会で自分で走り抜ける時代に干されるも何もないんですよ。だから抗いたいんですよね、ホントに。受け入れたくないんですよ」
――矛盾を感じるものを受け入れたくないってことですか?
「そうですね。自分の信念を曲げなければ、100人が『おまえは間違ってる』って言っても自分が合ってると思えば間違いないし。そういう意味では、自分の両親は最高の仲間なんです。だから、家族は大好きだし、お母さんの直感とかマジで当たるんですよ。そういう直感で生きてきたタイプで、そのお母さんに僕はすごく似たんですけど。お母さんを信じてれば間違いないですね。俺たちで勝つんだよっていう気持ちがあるから怖くないんだと思うんですよね。自分を信じてるから周りのみんなも信じられるし。だからみんなで勝ちに行くんですよね」
――今、この時点でもまったく迷いがない感じがしますね。
「ホントに迷いはないです」
――「どうしよう?」とかがない感じがします。
「はい。今、自分の心の中って澄んだきれいな空なんですよね。雲ひとつないきれいな空だから、この自分の中の世界って永遠に汚れることもないし、この空を汚すものってないんです。ホントに格闘技に純粋に向き合いたいから」
大晦日のさいたまスーパーアリーナを平本蓮の世界にします。絶対にそれは作る
――『リンダリンダ』の世界感みたいですね。
「ドブネズミが美しいという世界観、わかるんですよ。優しくなりたいというか」
――平本選手が『リンダリンダ』で入場してくると、お客さんがウォーッてなる感じが分かります。次は何の曲で入場するのか伺って良いですか?
「レゲエアーティストのCHEHONさんが入場曲を作ってくれて。それとトラヴィスを。新しい時代のロックスターになりたいんですよね、格闘技界のっていうか、ロックスターになる必要があると思ったんですよ」
――なるほど、ニルヴァーナみたいな感じの。
「俺は格闘技が終わったら死んでもいいっていう人生なんですよ。何で生きてるかっていったら格闘技で頂点を極めたいからっていう、生きる理由がそれだって気づいたんですよね。だから俺の中で結婚することとか、家庭を持つことは自分の人生のゴールではないし、80、90、100まで生きて長生きしてのんびり暮らしたいとか、そんな欲もないんですよ。格闘技で世界一になる、それが終わったら別にいつ死んでもかまわない、そういう生き方を見せたいんですよね。だから人生全振りだし100:0、全部自分にベットしてるというか」
――全然、迷いがないんですね。
「迷いはないですね。ぶち当たる壁も、もちろんあるとは思うんですけど、自分なら乗り越えていけると思うんです。K-1の頃も、もちろん覚悟もあったし、ゲーオとの試合もゴンナパーの試合ももちろん一生懸命やってきました。過去の自分も、すごい頑張ったなと思うんですけど、10代だったから不安定な部分が多少あったんですよ。
成人を迎えて22歳になってみて、コロナもあって1年ぶりの試合ですけど、その頃になかった闘争心とか自信とか、とにかく一人の男としての強さや覚悟が固まったというか。今までも、もちろん覚悟はあったんですけど、新たに心の強さを手に入れたんですよ。だから怖いものってホントにないです。怖いもの知らずとかじゃなくて、今ならどんな逆境でも受け入れられるんですよ」
――一般的な意味での「怖いもの知らず」とはまた違うんですね。
「無知で怖いもの知らずで突き進んで行くんじゃないんですよ。暗闇も無知で突き進むわけじゃなくて、しっかり知識をつけて理解しながら自分でちゃんとした道を作っていく。本気で丁寧に、よりきれいに。道はデカいんですけど、その中の小さい穴に糸を通していくというか、要はどんな状況でもしっかり打破するというか、しっかりクリアする、乗り越えて行く。そこに暗闇の荒野が待っているんで」
――大晦日の試合が荒野の暗闇ですか。
「運命ですね。去年は29日で大晦日じゃなく、BELLATOR(JAPAN)に出場しました。だから運命だと思うんですよね。自分が覚悟ができたから、『ホントにやる気があるならここで証明してみろ』って神様に言われている試合だと思うんですよ。神からの試練ですよね」
――萩原戦でそのドアを開けるという事ですか。
「そうです。刀を抜くというか。気負ってもないしナメてもない、ホントに集中できています。俺はホントに格闘技ができるっていう神からのアンサーなんですよ、今回の試合は。格闘技の神に愛されるか愛されないかの試合なんで、僕は間違いなく愛されるほうの男なんで、それを表現できるんじゃないかなと思います」
―ー新しい平本蓮選手が見られる、と。
「『新生K-1の申し子』って言われてきたんですけど、『格闘の申し子』としての最初の試合ですね」
――それは『負けられない』という表現とは違うんでしょうね。
「違うっすね、神からの試練なんですよね。『おまえは、どうこれを切り抜けるの?』っていう試合なんで。そういうときって自分の気持ちを信じてれば必ず会場も自分の力になると思うし、会場を自分のホームにするというか会場を味方にする」
――当日は、さいたまスーパーアリーナを「平本蓮の世界」にしたいですね。
「作るっすね。絶対にそれは作る」
――今は、同階級では斎藤裕選手がRIZINフェザー級チャンピオンで、目標っておっしゃていたと思うんですけど、大晦日の先のプランはありますか?
「そのプランを今、作るのは覚悟ではないんですよね。まず、この試合を使って神に誠意を見せてからというか。だからその先は誰とやりたいって選ぶべきではないんですよね。今は糸をひとつひとつ丁寧に通す段階なので、まずはこの穴に集中したいというか」
――その先はUFCとかっていうことですよね。
独りの人たちが『俺も一緒に戦っていきたい』となるように、大晦日では皆の心を奮い立たせたいですね
「そこまでの目標は作ってるんですけど、この途中段階はそのときの空気とタイミングで。ホントのスターだったら、いい試合が組まれると思うしいい相手も来るし、その状況状況で完璧な相手と戦えると思うんですよ」
――平本選手みたいによく考えている選手には、試合後のインタビューとかしにくいでしょうね(笑)。
「次の目標というよりもRIZINを作る。RIZINを作るっていうことは鏡なんで、自分にも絶対返ってくるんですよ。何だかんだいって僕、22歳じゃないですか、やっとスタートだと思うんですよ。僕は始まりが16歳で早かったんで、ベテランみたいな空気感出してますけど、22歳ってまだ始まったばっかりなんで」
――社会人だと1年目の歳ですからね。
「俺は養子みたいなもんです、RIZINの財産を輝かせるための。だから俺が原石じゃなくてRIZINが原石なんですよ。俺がどう輝かせるか、それがスターだと思うんですよね。RIZINをそういう舞台にします」
参考記事:今格闘YouTuberが面白い アウトサイダー出身の喧嘩屋で総合格闘技“ストリートの申し子”朝倉未来選手 | TABLO