格闘の申し子・平本蓮 RIZIN大晦日大会でMMAデビュー 「俺は独りじゃない。皆も独りじゃない。ファンの皆と一緒に勝ちにいく」(インタビュー後編)

――当日は、平本選手と萩原選手のバッチバチが観たいという以上のものを感じて試合を観ると思います。

「そういうバチバチとかってあくまでオマケなんですよね。平本蓮のデビューシングルを出すような感じです。だから相手と共感ももちろんいらないんですよ。相手と共感してお互い良い具合のフィーリングで試合を盛り上げるとかじゃないんですよ。自分の世界観の独走ですよね」

――ここまで考えを言語化できる、あるいは受け答えする格闘家の方は珍しいですね。しかも22歳。失礼ながら、ご家庭がすごく良いんだと思いますがどうでしょう。

「そうですね、最高の家庭で育ったから今の僕があるというか。僕の父親が本当に誇れる父親なんですよ。唯一この世界で尊敬するのは父親なんですよ。でも僕は絶対自分の父親にはなれないんですよ。家族を守ったり、そういうタイプではないし。人に愛を与えるというよりは人に愛をもらって戦っていきたいと思ったんで、自分はサポートする側の人間じゃないなと思ったし。

だから自分で自分の人生を謳歌していくというか。独りなんですよ。それが幸せです。家族団らんもいいですけど、それは自分が家族を作らなくても生まれたときから家族に恵まれてたんで、自分が良い家庭を作りたいとは思わないんですよ。自分のお父さんとお母さんが最高だから、今の家族のままでいいんですよ。だから僕は演者になる人生なんだなって振り切ってるんですよ、普通の生活はいらない、突き抜けるんでっていう」

――孤高でいることが幸せなんですかね。

「それはまだ愛を知らないとかそういうことじゃなくて、その愛を求めていないなと思ったんですよ。違う愛というか、格闘技に愛情を全力で注ぎたい、じゃないですけど、愛って人間関係だけものもじゃなくて、そういう戦いのなかにもあると思っているんです。だから人と違うことをしたいとか、みんなと一緒は嫌だとかじゃなくて、これが好きだからこれを選んでいくというか。空気を読まない男でありたい」

――22歳でここまで考えるというのは、ビックリしました。

「K-1のときになかった自分の強さを表現するとしたら、独りでいるのが怖くなくなったんですね。それが一番わかりやすいかもしれないです。RIZINに来て、独りでいるのが怖くないんですよ。常に遠くに家族がいたり、練習仲間と一緒にいない時間でも愛を感じるから、独りじゃないんですよね。K-1のときは、戦うときはどうせ独りだと思ってたんですけど、いまは違っていて独りが怖くないんですよ」

――ファンもそうですよね。

「ファンもそうです。ファンも一緒に戦っていく。『応援なんかすんな、一緒に戦うんだよ』っていう気持ちですね。だから独りが怖くないんですよ。ファンも一緒に戦ってるんですよ。ファンは俺の武器なんですよ」

――ファンも武器という事ですか。

「そうです。それは利用しているとかじゃなくて、自分にとって、心強い武器になるという事です。だから『一緒に戦っていくぞ』っていう気持ちですね。『独りじゃねえよ、俺たちは』っていう。常につながってるんだぜっていう世界観を見せられたらいいですね。1人ぼっちの人ってこの世界にたくさんいると思うんですけど、そういう人たちが俺の試合を観て、『俺も平本の応援したい。俺も一緒に戦っていきたい』っていう。大晦日では、そういうふうに皆の心を奮い立たせたいですよね」

 

※僕はリングに上がる人は無条件にリスペクトしています。そこに上がるまで、相当の努力をしてきたはずですから。そこで勝ち残る人には更にリスペクトが進みます。出場選手全員に心からのエールを送ると同時に、大晦日、平本蓮選手の世界にさいたまスーパーアリーナが染まる事を期待しています。(インタビュー◎文/久田将義 写真◎インベカヲリ)

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