【暴走対談】高須基仁(出版プロデューサー)に聞く「ヘアヌードはいかにして流行したのか」 PART1(全3回)
「ヘアヌードはいかにして流行したのか」
高須基仁(出版プロデューサー)vs平野悠(ロフト席亭)
野村沙知代さんが亡くなって早、数カ月経ちました。ここでは愛称のサッチーと呼ばせて頂きますが、かつてサッチーとバンドを組み、ヘアヌードにさせようとした男たちがいたのです。哀悼と愛好の意を込めて、塩見孝也追悼対談から続く「暴走対談」第二弾です。まさに「暴走」している対談です。(聞き手・加藤梅造)
野村沙知代さんバッシング騒動の中で起きていたこと
――サッチーの追悼ということで、まずサッチーについての話なんですが、元々高須さんの事務所に平野さんと一緒にいたんですよね?
平野:高須先生が赤坂に事務所を構えて偉そうだというんで、じゃあ見にいこうかと。まあ表敬訪問だよな。そしたらその時たまたまサッチーがいて。突然「平野さんサッチーバンド作ろう」と。サッチーがOKもしてないのに勝手に言いだすわけだよ。それで今から記者会見開くとか言うんだよ。これからサッチーがロフトからデビューするからと。だからこっちは頭抱えたよ。サッチーをどうやってフォローしてやっていいのかって。だからうちのロティカ(ニューロティカ)に頼んで。
――有無を言わさない感じでしたよね。ちょうどサッチーが干されていた時だったんですよね。
高須:その時に平野さんがあがた森魚がやった『オートバイ少女』のことなんかをなんとなく話をし出して。
あがた森魚は嫌いだけど、『オートバイ少女』は良かったよなって。それで俺はそれにすごいインスパイアされて、そこにたまたまサッチーがいたので、今言ったような話になっていった。「やりましょう」っていう形になったんだよな。
2001年の9.11をまたいでる頃。前か後ろかどっちか。その辺の話。
平野:あの時代はサッチーは有名だったよね。バッシングで。もう芸能ニュースから何からすごかったもんね。メディアが叩きまくっていた時代に高須さんがサッチーに近付くんだよ。あれはおもしろいから近付いたの? それまではサッチーと付き合いはあったわけ?
高須:ない。
平野:ほおほおほお。それじゃあ呼んだわけ?
高須:ある日突然、電話かけて呼んだの。そしたら彼女、行く所ないじゃん、どこにも。それから毎日来るようになった。
平野:赤坂のいいところにあったもんな。事務所、俺も見た時に高須さん儲かってんなって思ったもんな。
高須さんの旬の時代は2000年ですよ。この時代。要するにいろんな人を脱がせて土下座して大騒ぎしたっていう。今はどうなってるんだろ。結構いろいろやってんの?
高須:そこが平野さんの俺に対する評価がちょっと違う所だよ。
平野:高須さんはやっぱりすごかったよね。
ーー「マネーの虎」(TBS系列)の出演とかもありましたしね。
高須:あの番組に出たのは2003年か4年くらいだったと思いますよ。今の方がすごいですよ。
平野:今の方がすごいんだ。失礼しました。まず脱がせ事件から始まるんだけど。
高須:僕、写真集をやってたわけよ。ナイタイ(ナイタイ出版)の山田(鉄馬)が元に立っていて、実質は俺が作ってたわけ。あの当時は俺が自分で出版社を持ってなかったわけじゃないですか。
それで一番最初にロフトにお邪魔した頃はアドベント映像って名乗ってたと思うんですよ。ほとんど名前のない会社で金になればいいやってことが先にあって、あんまり自分が前に出るってことはなかったわけよ。それが96年に平野さんのとこに出ることになって、それが俺がメディアに出ることになった一番最初だから。
――ロフトプラスワンですね。
高須:そう、そこまでは何もやらなかったの。
平野:この頃は凄いですよね。藤田朋子から何から。
高須:でも、それはずっと後なんですよ。(世に)名前を出す前の方が儲かってたのよ、俺。それで最後の方には俺の名前出さなかったのも何人かいるんだけど。サッチーも名前出してない。
当時、サッチーがメディアにガンガンやられてて、あんまりうるさいっていうので日本青年社の副会長が動いて、いろんな人を抑えにかかったわけよ。
その流れでナイタイが動いて「じゃあ写真集やりましょう」っていう話になって、僕の所にって指名がきて、水面下で写真集をやってるわけよ。それがサッチーとの最初の商売。
平野:サッチーの写真集を作ろうと思ったの?
高須:最初、企画して、俺はナイタイの円山(社主)さんに写真集やっちゃったらいいじゃないですかって。
平野:ヘアヌード?
高須:話題になってくれれば誰でもいいわけですよ。当時は有名人の毛が落ちれば誰でもいいっていう。そういうスタンスだったんで、サッチーやりましょうってなったんですよ。それが2000年くらい。一番はじめのサッチーと僕との付き合い。それでその後、平野さんがお見えになった後、写真集も売れて。
平野:それから、島田陽子から天地真理、藤田朋子、これらの話をちゃんとして欲しいんだけど。「脱がせ屋・高須」について。今は脱がせ屋とは言わないんでしょ?
高須:俺はね、一筋の毛で追われてたわけよ。
平野:毛の商人(笑)。
高須:パンツの隅から1本出てるだけで、本庁に呼ばれるわけじゃない? 今は全週刊誌、平気で出してるわけじゃない? 場合によっちゃあスポーツ紙でまで毛が出てるわけでしょ。だから俺に、みんな感謝しろっていうんだよな。
平野:そりゃそうだ。高須さんが発掘したっていうかね。
高須:今はこういう状況になってしまってあちらこちらが全部毛だらけになった時代。もういいよって。だからもう今は終わってるわけよね。
週刊大衆、週刊実話、アサ芸、フライデー、フラッシュ、現代、ポスト、週刊誌でいろいろやってるけど、どれもコンセプト一緒だもん。俺の作ったやつの焼き直し。
平野:そうなんだよな、この人、結構先駆者なんだよな。
高須:それともう1コ思うのは、今は本当の女優なんて誰も脱がないよ。トップ女優はね。俺、ずっと書いてきた言葉があるのよ。陰毛一筋。陰の毛、一筋って。
平野:高須さんの、脱がせる為なら穴掘ってそこに頭を埋めて土下座をする、という姿勢ね。
では具体的に、高須さんの脱がせ事件について説明して欲しいんですが、島田陽子、天地真理、浅香唯、藤田朋子、松田聖子、三原じゅん子。ここいらの思い出なんかを話してください。
三原じゅん子議員のヘアヌードの過去
高須:デモが来たことがあるのよ。
平野:デモテープ?
高須:うちの会社にデモが。
平野:文句の方?(笑)
高須:文句が。
平野:ガハハハハハ。誰を脱がせた時?
高須:浅香唯の時。その時は八丁堀に会社があったのよ。そうしたら八丁堀の駅から40人くらいのデモ隊が来て。
平野:ガハハハハハ。いいですね(笑)。
高須:それで、外で「浅香唯、脱がすの反対」「オヤジ出て来い」ってなって。それが浅香唯反対事件。
もう大変だったんだよ。1993年か4年。それで浅香唯はこれはまずいよって言うんで、撮れてるんだけど、ここんところを泡で隠してってやって。
でも初めから毛がなかったみたいです。それなんで撮ったって毛がないんじゃしょうがないじゃない。だから泡で隠してあるようなフリをして普通の写真集にしてビニールかけて売っちゃったの。
でもそれも後ろめたいんで、普通だったら3800円なんだけど2400円にしたの。だから、浅香唯のには毛が写ってないんだよ。それはデモ隊に負けたの。そのトラウマがあるのよ。デモに弱いのよ、俺。
自分ではするけど、やられるのには弱いの。浅香唯で一番の思い出はそれですね。これ浅香唯がヘアヌードじゃなかったっていうことでタイトルがすごいんだよ。「フェイクラブ」っていうんだよ。
平野:いいじゃないですか。フェイクだもんな、フェイク。
高須:だから浅香唯のは、みなさんすいません、フェイクですってことで。
平野:では、高須さんの絶頂期だと思う97年に島田陽子から始めて、1億円払ってとにかく脱がしたっていう噂が飛んだんですが、これはどうだったんですか? 話題になるヘアヌードを仕掛けたのは誰が一番初めだったんですか?
高須:いちばん最初はね、松尾嘉代。
平野:誰だよ、知らねえよ。松尾嘉代ってなんだよ。
高須:日活の松尾嘉代さん。それと島田陽子。
平野:やっぱり島田陽子ですね。97年ころですね。伝説としてはね、高須さんが1億円のトランク持って島田陽子の前に現れて土下座して、これで脱げって言ったっていう、噂ですよ。
高須:それをやったのは天地真理。
平野:天地真理なの?(笑)
高須:天地真理は本当に3000万持って行きましたよ。
平野:3000万だったの? 1億っていうのはオーバーなんだ。
高須:天地真理はね、本当に一番愛し合ったからね。1億円まで上がったっていうのは、島田陽子。
平野:これ、97年に現金が入ったカバンを持って。
高須:島田陽子の裏話をしておくと、ニューヨークで撮ったってことにしてるけど、実際は千葉県の成田のスタジオで撮ってる。ハウススタジオでニューヨークっぽくしてやっちゃったんだよ。それでカメラマンは遠藤忠で、ニューヨークの写真どこかで買って来いっつって、それで街歩いてるのなんかはちょっと合成しちゃって……。
平野:(写真を並べて)今ね、9人並んでるんですよ、高須さんが脱がしたっていう女性が。この中でいちばん印象に残ってるのは、やっぱり藤田朋子ですか?
高須:三原じゅん子(現・参議院議員)です。
平野:三原じゅん子ね。50万円でやったっていう話? これロフトラジオの時の資料なんですけども50万円って書いてあるよ。
高須:一番最初はその辺だったんだけど…。
平野:カメラマン馬乗り暴行事件って何?
高須:それは三原じゅん子がフライデーの記者をぶん殴って。
平野:カメラマンに?
高須:そう、私の写真を撮ったって。あの頃は恋多き女だったんで、誰かと付き合ってる時に撮られて。ちょうどあいつはヤサグレてたんで、そういう不良少女の感じで馬乗りになってぶん殴ったんだよね。最後はもう1人の奴と一緒に殴ってたかな。顔はやめろ腹殴れ腹殴れって言って。
平野:なんだよ、お前ら暴力団か。ガハハハハ。
高須:それで、写真集は荒木経惟で撮ってんのよ、『Junco』ってのを。1995年に。その時に名文があるのよ。「毛はいいけどおっぱいダメよ」っていう。乳首ダメっていう。なぜかっていうと全然おっぱいがないのよ。
平野:それは藤田朋子でしょ?
高須:いや違う違う。
平野:三原じゅん子? 三原じゅん子って全然イメージが湧かないんだけど、どんな女?
高須:金八先生に出てて、今、国会議員ですよ。それでヘアヌードやってんのよ。
平野:50万で口説いたっていうのは本当?
高須:本当。金がない頃だったみたいでそれでやりますって言って、やって。松永っていうレーサーと一緒になってる頃でさ。じゃあ着手金50万であとは印税でってなったんだけど。最後これも裁判になりましたよ。
平野:ガハハハハ。
高須:でもそれは、もう増刷しないということで6万部くらいでおしまいになっているんですけど。3800円で6万部だからね。それで今、三原じゅん子は自民党で選挙に通っちゃって、予算委員会に出てるわけよ。
平野:予算委員会出てる中であのヘアヌード見せてやれよ(笑)。
高須:どっかで生意気言ったら書くぞって思ってて。
平野:ガハハハハ。(写真を見て)こうやって見てみると三原じゅん子っていいね。うちの「TABLO」に使わしてもらおうよこの写真(笑)。いいですね。ちょっとこれ使っていい? ガハハハハ。
高須:使っていいよ。(写真を指して)これはちょっと合成してるかもわかんない。こっちは俺の作品だから、いいよ。
平野:うちは健全なところでやってるから、ヤフーとかそういったところとタイアップしたいんでね。あんまり過激なことはできないんですよ、高須さん(笑)。
高須:三原じゅん子が偉そうになったら高須がこれを絶対持ってくるって。
平野:高須さんは俺らが興味あることなんでも知ってるなぁ。ところで、なんでこの女がいちばん思い出に残ってんの?
高須:国会議員になっちゃったから。
平野:そんなの大したことないでしょ。
高須:偉そうに予算委員会で福島みずほとやり合ってるでしょ、あいつ。馬鹿にしてる顔みたいで。ヘアヌードやったのが国会議員だよ。
平野:『遠野物語』の藤田朋子のでは、高須さんいくら儲けたの?
高須:あれはマンション1コ買ってるからね。
平野:やっぱ藤田朋子って綺麗だね。5000万くらいは入ったんでしょ? 『遠野物語』ですよ。
高須:出版差し止めの仮処分だけど、13万部出しちゃってるからね。
平野:3800円で13万部だからね。この西川峰子っていうのはどんな女なの? これに関しては3000万円も払ってるんだよ。
高須:これはね、実は隠れて一番売れた『PRIVATE』っていうのがあんのよ。
平野:ちょっと今回この高須の撮った写真いっぱい載せようよ。そしたらすごい伸びるよ。
高須:平野さん、こんなの今もうネットに出ちゃってるじゃない。だからさ、写真集なんて今はもう売れないって。
平野:売れないけど見たいじゃん。
高須:一番話題になるのは、自民党でカッコいい事言ってる三原じゅん子が脱いでることだよ。予算委員会で沖縄問題語るんだよ。原発語るんだよ、こいつが。
平野:このヘアヌードを総括してください。どうだったの? これは。ブーム?
高須:やっぱり禁止されたことをこじ開けるっていうのは金にもなるし、自分のカタルシスも満足する。
平野:禁止されていることをこじ開けるっていうのは、タブーなことに挑戦するってことだよね。
高須:だから、タブーなことが一般論になったらそれは商売にはならないし、自分のカタルシスも満足できないっていうか。カタルシスが満足っていうのはおかしいけど。
平野:でも、高須さんがやるのは全部もめてるよね。ガハハハハ。
高須:全部禁止されてることをやるんだから。
平野:全部、まともにいったことがないというね(笑)。 アラーキー(荒木経惟)とは喧嘩するし、そんなのばっかりだよ(笑)。
高須:何かっていうとね、建前ばっかり言うんじゃねえよっていうね。初めから禁止されてることやってんじゃないかっていうことを言いたいわけですよ。だから禁止されてることにトライする人っていうのは、最後に一般論になるとイラっとするわけよ。平野さんは、失礼なことを言うのはもう慣れているんでしょうけど。
平野:そんなことない。
高須:俺はね、立派なことがあるんですよ。
平野:お前なんか立派なことなんて一つもないだろうがよ(笑)。
高須:ロフトをずっと離れないってことよ。
平野:そうね、これはね。俺はもらってないけど、あんだけこいつから100万をぶん取ってさ、それで普通は終わりだよな(※ロフトプラスワンで高須氏が客に暴行をふるった件)。でも、なんだかんだ……梅さん(加藤梅造ロフト社長)との付き合いがあるからかな。
高須:違うよ。梅ちゃんはちゃんとこっちの確認を取ってるから。だから俺は、その時出入り禁止ってなったらちゃんと俺は守るわけよ。泣き言も言わなかったし。でも、梅ちゃんとも調整して調整してそれで考えないといけないんで。「熟女クイーンコンテスト」とか考えたものをね。
平野:あれはすごい、あれもありがたいことで。
高須:いろんなことを考え抜いてこれでどう? って持っていったのがそれっていうね。
(PART2へつづく)