「山上徹也容疑者」とは何者なのか 安倍元総理暗殺は最近多発しているアメリカ銃乱射事件と同種の犯行である

しかし、最後に一つ特筆しておきたいのは、最近アメリカで特に頻発している銃乱射事件の一つであるバッファロー銃乱射事件との酷似である。犯人のペイトン・ゲンドロン(19)は、幼い頃から感情的やり取りが欠如し、意識・無意識に自分たちの理想を子供に押し付ける、やはりごく当たり前の双方向コミュニケーションの欠如した家庭で不満や怒りを自分の中にため込む形で成長した。

そして、6年生の時に黒人女子とクラスで揉めたことから、1日登校禁止の処分を受けたことから、後に、自分の生い立ちから来る怒りを、主に黒人客が利用するTOPSスーパーを銃で乱射し10人の黒人客を殺害している。これは山上がコミュニケーションの欠如した家庭で怒りを募らせ、愛情面でも金銭的にも母親を奪った特定宗教団体に、すべての怒りを爆発させた構図と酷似している。

アメリカを絶対正義であるかのように考え、アメリカ文化を究極のものとして真似しようと努めている日本が、アメリカの負の側面も踏襲してしまうのは至極当然のことと言える。少なくとも日本社会にアメリカ的犯罪が進行しているという事実をしっかりと受け止め、然るべき対策を取れる体制を確立して行くことが急務であることを、今回の安倍元総理の暗殺は指摘してるものと考えられる。これまでの「古き良き村社会」の幻想では太刀打ちできない現状が既に始まっているのである(了)。(文@阿部憲仁・桐蔭横浜大學教授 ※アメリカの凶悪犯罪に詳しい)