足立区といえば東京23区の中でも不人気ナンバーワンという有難くない冠をいただいた区である。しかしその足立区にとてつもない超パワースポットがあるのをご存知だろうか。
写真を見ていただこう。
手前に見えるのは石組みで出来た眼鏡橋。何かに似ていないか。そう、皇居正門の石橋、一部の人が「二重橋」と勘違いしている東京を代表する名所に良く似ている(二重橋は正確には皇居内殿に向かう途中の堀にかかる鉄橋である)。
そして眼鏡橋の橋の向こうに目を凝らせば、そこに見えるのは日本最強のパワースポット、神々しい富士山の姿だ。
皇居と富士山、二つのありがたい名所をイミテーションとはいえ一気に拝観できる場所があるなんて! これがパワーを放出しないわけがない。
タネを明かせばこの超パワースポット、足立区立の「東和親水公園」をある一点から撮影することで生じる奇跡の景観だ。
東和親水公園は同地が田園地帯で用水路が張りめぐらされていた名残の公園で、富士山のように見えるのは池に流れ込む噴水の背景壁。近くで見ると富士山型に積まれたレンガに銭湯の排湯口のようなライオンのレリーフがついているマヌケ感。
おまけに寒い時期は水が出なくて微妙にみすぼらしい。眼鏡橋も実は二重じゃなくて四重の石橋。池には錦鯉が泳ぎカルガモが戯れているもののその水はどす黒く汚れている。このあたりが足立区クオリティだろうが、その物悲しい公園を、目の前の道路を渡ったピンポイントから撮影すると、ひれ伏したくなうような奇跡の美景が出現するわけだ。
この超パワースポットがあるのは足立区東和4丁目。「葛西用水親水水路」という遊歩道の中にある。足立区といえば北千住や竹ノ塚が有名で、「東和」なんて住所知らねーヨという人も多かろう。
それもそのはず東和地区は足立区の東のはずれで最寄駅は「こち亀」でおなじみ葛飾区の亀有駅。なので住民もあまり足立区を意識してないかもしれない。葛飾区が足立区を侵食するように張り出した地域の北側が東和地区なので、足立区の威信を誇示しようと立派な景観を無理矢理作り出したのかもしれない。
ちなみに「葛西用水浸水水路」は春先には花見の名所となり、南側の入り口には巨大な水車のモニュメントがそびえる。近所にはスケルトンのアーケードがかっこいいシャッター商店街「アモール東和」もある。商店街で買った持ち帰りのヤキトリをモグモグしながら歩いてると、近くの幼稚園が送迎に使っているかわゆいピカチュウバスが。ワーイ楽しい......。
まったく足立区も捨てたものではない。皆さんも足立区東和に小さな旅にでかけてはいかがか。(文・写真◎藤木TDC)
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