タイ総選挙 集計不正の告発が相次ぎ、選挙結果は5月に!? 国内外から指摘される「不公正さ」
なぜ選挙結果が1ヶ月以上先延ばしに?
東南アジアの中でも、日本人に人気の観光地のタイ。そのタイで3月24日、約8年ぶりとなる総選挙が行われました。
もともとタイでは、タイの北部などを拠点にして貧しい層への救済政策などで評価が高い政治家のタクシン氏を中心とする派閥が、政治的に大きな力を持っていて、選挙では非常に強い存在となっていました。
しかし、特にタイ北部を対象として、貧しい層へ税金を使って救済するタクシン派の政策に、富裕層を中心とする層や南部の層などは不満を持つようになり、対立が激化していきました。
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2014年5月には、当時首相だったタクシン氏の妹のインラック氏の政権に対して軍事クーデターが発生。インラック政権は転覆し、軍事政権が誕生して、そのまま現在のタイのプラユット政権となっています。タクシン氏とインラック氏はそれぞれタイの裁判所で有罪という判決が出ていて、タイ国外へ亡命中という立場となっています。
そしてクーデターから約5年経った今月の24日、タイの軍事政権は民主化への復帰を行い、タイの総選挙の投票が行われました。この選挙はタイの軍事政権下で作られたタイの新憲法の元で行われており、非常に軍事政権に有利な制度の元で実施されました。
たとえば、この選挙では下院の500人(選挙区から350人、比例代表から150人)を選ぶのですが、それとは別に上院に250人の議員がおり、この上院は実質上、軍事政府が議員を指名する制度となっているのです。そして上院、下院を合わせた合計750名の選挙で次期首相を決めるとなっている事から、極めて軍事政権に有利な制度となっているのです。
しかしそれでも、最後に有効だった選挙の2011年から実に約8年ぶり、軍事政権となってから約5年ぶりとなるタイの選挙に、24日には多くのタイの人々が投票に行きました。
そして投票が行われます。投票日の夜、タイの地元メディアは出口調査の結果から速報で、議席数の見込みはタクシン派政党が163議席、軍政派は96議席前後の見込みと大きく報じます。日本でも時事通信社のバンコクの支社が、この見込みを配信しました。
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ところがタイの選挙管理委員会は、投票日の夜に開票結果を発表せず、翌日の25日の午後6時になって、ようやく選挙区の350議席の結果のみを暫定結果として発表しました。
この時の結果は、タイの選挙への投票率は65.96%で、選挙区(定員350)の結果はタクシン派政党が137議席、軍政派政党が97議席というもので、出口調査の予測と比べると、ずいぶんと差が縮まった結果となっていました。残りの比例区(150)の結果は、この時点でも発表されませんでした。
さらに、日本の大手メディアでも不思議なことが起きます。日本のメディアである時事通信は、3月24日に配信した記事の「タクシン派、第1党の見通し=過半数届かず多数派工作焦点-タイ総選挙」とする記事を、「得票数で親軍政リード=過半数届かず多数派工作焦点-民政復帰へタイ総選挙」と、全く違う内容の記事に、告知も説明もなく差し替えをしたのです。
<時事通信の記事>https://www.jiji.com/jc/article?k=2019032400319
通常、このような大きな記事の差し替えをする時には、差し替えの説明などをして行う事が通常です。ところが、差し替えの説明も何もされていません。
この差し替えにより、Yahooニュースなどではタイトルはタクシン派優勢を伝える元の記事のタイトルなのに、中身は軍政派がリードとする更新後の記事となっており、差し替えが行われた事がアピールされる内容で掲載がされるようになっていました。
このような事情から、日本メディアに何かあったのではないかと大きな波紋を広げてきています。
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そんな中、3月28日(木)の午後3時にタイの選挙管理委員会は、開票率100%の結果を発表しましたが、それによると投票率は74.69%と、大きく増加していました。
その結果では、政党としての得票数では軍事政権を支持する政党で約840万票、ついでタクシン派政党で790万票という結果が発表されています。しかしながら選挙結果は最終的に発表されるのは、5月初旬とされています。
さすがにこの結果には、「公正さへの疑問」が、海外からもタイ国内からも多く寄せられており、選挙監視を行った国際NGOが懸念を表明する、アメリカ政府や欧州のEUが、調査と選挙の信頼性の回復を求めるなど、騒動が広がっています。
プラユット首相は続投の可能性が高いと見られていますが、選挙そのものが公正にされているのかが疑問として見られている以上、なかなか政治的には安定させる事が難しい状況が続きそうです。
たくさんの日本人が観光に訪れ、日本企業も多く進出しているタイ。タイの国民のためにも、ぜひ早く安定を取り戻して欲しいですね。(取材・文◎西山哲治)