秋田女児殺人事件 娘を母親に殺害された父親が行政を訴えた理由 「助けられたのではないか…」
この事件を取材し、今も阿部さんと連絡を取り合っている筆者、西牟田靖が、事件の概要や提訴の意味について、記してみたい。
※児童養護施設暮らしの9歳女児が…「秋田・長女絞殺事件」の深層(ルポ前編)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56148
※「救えた命だったのでは…」秋田9歳長女絞殺事件娘・父の悔悟(ルポ後編)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56149
わが子に会えずじまい
阿部康祐さんと祐子は、今から10年前の2009年、愛実ちゃんが2歳のときに離婚している。それから亡くなるまでの7年間、阿部さんと愛実ちゃんはほぼ会えずじまいであった。
離婚前のことだ。夫婦関係が破綻し、一人となった阿部さんが離婚調停を起こした。もめたのは愛実ちゃんの親権だった。というのも日本では諸外国のスタンダードである離婚後も共同親権ではなく、離婚後単独親権となるからだ。
調停の場で阿部さんは主張した。
「(精神疾患があり、家族との縁をほぼ絶って暮らす)妻に愛実は育てられないだろう。こちらには面倒を見る人はたくさんいる。それに私自身、回復次第働ける』と」
しかし親権は祐子側に認められてしまう。というのも日本の調停や裁判では、一緒に暮らしている方が有利という「継続性の原則」があったり、「母性優先」という考えがとても強かったりするのだ。
親権を諦めざるを得なかった阿部さんは、祐子側が提案してきた「月一回の面会交流」を呑んで調停を泣く泣く決着させる。
ところがその後、その取り決めは完全に反故にされた。「インフルエンザが流行っているから」などと、その都度もっともらしい理由を出され、会わせてもらえなかったのだ。