コンビニから成人向け雑誌が消えた日 住宅街の自販機でも買えた平成は本格的に終わった|中川淳一郎
もう一つ記憶に鮮明な雑誌自販機といえば、東大駒場キャンパス裏にあった自販機群である。昔、鰻の寝床のような自販機エリアってあったじゃないですか。清涼飲料の自販機がいくつかあり、カップ麺の自販機、ハンバーガーの自販機、さらにはアイスクリームの自販機もあったりする場所が。そしてベンチが置いてあったりする場所が。
駒場キャンパスの裏にはエロ本自販機だけが並ぶ自販機コーナーがあった。1993年当時、私は下北沢で友人と飲んだら歩いて山手通りを通り、駒場キャンパス内の自治領「駒場寮」で寝るのがいつものパターンだった。
「今日はエロ本自販機屋に行こうぜ」とマサが言った。「いいねぇ!」と他の3人も同意。「エロ本自販機屋」という言い方も変ではあるが、自販機が複数あるから「屋」がついたのだろう。
挑発的なポーズを取る裸の女性が何人も登場する表紙に興奮したマサは雑誌が欲しくなったようだ。だが、カネがない。そこで「おーい、出てこいよぉ!」と叫びながら自販機を揺らした。
そんなことでエロ本が落ちてくるわけもないのだが、なんと、突然自販機から「ブーブー」と警告音が鳴り始めたのだ! 当時、監視カメラがあったかは疑わしいうえに、警備会社とも繋がっていたかは分からないが、狼藉者の登場には警告音で対抗する程度の機能が自販機にはついていたのだ。
我々は大慌てで外に出て脱兎のごとく山手通りを渡り、東大キャンパス内に入った。