歌舞伎町・明星56ビル火災から18年 遺族から「生きた証知ってもらいたい」と問いかけ 犯人の行方は未だ分からず

このように、管理者たちの責任が大きかったのは事実であるが、最終的には和解という形で一応のケジメはつけた。一方、まったくケジメがついていないのが、歌舞伎町の闇に消えた「放火犯」である。

筆者は当時、そしてその後もこの放火事件を取材してきたが、犯人像については事情通たちの間でも、いまだ特定できていない。

しかし、このような要因ではないか? という推測は、訳知りの間でなされてきた。そのなかで筆者が印象に残っているのが、明星56ビルに入っていた店舗を巡って、闇社会間での綱引きが(放火の)背後にある、というものだ。当時、歌舞伎町の闇社会は“再編”が活発であり、新旧の勢力がしのぎ合っていたことが、その主たる論拠だ。もちろん、消防や警察が結論を出せないなか、ひとつの推測に過ぎないのだが……。

悲劇から18年、2019年の事件現場は例年以上に注目を集めた。前述したように京アニ放火事件の影響があったことに違いはない。それと同時に、一部遺族からの匿名のAさんでもBさんでもない、「生きた証を知ってもらいたい」という真摯な問いかけも大きかった。歌舞伎町ルネッサンスで賑わういまだからこそ、改めて振り返ることが大切ではないか。(取材・文◎鈴木光司)

あわせて読む:京アニ放火事件被害者の実名報道問題 忘れてはならない2017年12月に発生した「さいたま風俗ビル火災」を | TABLO