病気なら万引きしても仕方ないのか 元マラソン選手・原裕美子さんの判決公判に裁判傍聴人が感じること
以前、万引きの犯行現場を目撃したことがあります。スーパーの鮮魚コーナー、犯人は腰の曲がった小柄なおばあちゃんでした。氷水に浸けられている100円の生さんま一尾を、彼女は素早く周囲を見回した後に素手で掴みそのままポケットにねじ込みました。
人間が人間でなくなる瞬間を見たことがありますか?
その時のおばあちゃんの形相は、人間のそれとはとても思えませんでした。そのまま店外に出ていく彼女の後ろ姿をなすすべもなく見送りました。恐ろしくて足がすくんでしまったのを覚えています。
原裕美子さんは商品のキャンディを上着に隠しこむ時、一体どんな表情を浮かべていたのでしょうか。
彼女が本当に病気なのかどうか、それはわかりません。ただ、万引きをしてしまう、または万引きをせざるをえない苦しみから解放され、今後はもう万引きをしないでもいい人生を歩んでいけることを願っています。(取材・文◎鈴木孔明)