病気なら万引きしても仕方ないのか 元マラソン選手・原裕美子さんの判決公判に裁判傍聴人が感じること

クレプトマニアが原因で万引きをしたと語る被告にある裁判官が語りかけていた言葉がとても印象に残っています。

「最近は万引きの動機を病気だって言う人がすごく多い。でも、本当に病気が原因でやってるような人ってごく一部です。病院から診断書をもらったことで『自分は病気だから仕方ない』って思ってまた繰り返す人もたくさんいます。あなたがそうだとは言わないけど。病気のせいにして自分のしたことときちんと向き合わないと必ずまた同じ過ちを繰り返します」

この裁判の被告は被告人質問で何度も、

「刑罰より治療を!」

というフレーズを言っていました。この人も万引きで執行猶予判決を受けた直後に再び万引きで逮捕された人でした。前回裁判でもクレプトマニアだと主張し、「病院に通って治療をするので、もう再犯は絶対に犯さない」と話していたそうです。

社会が罹っている「病気」

先日、80歳を過ぎたおじいちゃんの万引き裁判を傍聴しました。スーパーで惣菜2点、販売価格合計420円を窃取した、という犯行です。動機は「お腹がすいたから」。

食べ物を買うお金はありませんでした。彼は生活保護を受給していましたが、保護費のほとんどはお酒とパチンコで消えていました。こう書くと憤る人もいるかもしれませんが、友人も身寄りも全くいない彼が独りで1日を潰す手段はそれ以外に何もなかったのです。同じような動機で過去に何度も万引きで捕まっている彼への判決は懲役5年の実刑判決でした。

彼の犯行動機もある意味では「病気」だと思います。それは彼個人だけでなく、この社会全体が罹かっている「病気」です。

たかが万引き、そう思う人もいるのではないでしょうか。