松本人志にめちゃくちゃウケた三又又三の秘芸 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』(2)
町山:誰にも伝わらない。一生懸命考えて、すごい緻密にやってるんですけどね。それに対して照英さんは本当に何も考えてない。博士が照英さんのことを『週刊文春』に書いたら、照英さんから電話が来て、こう言うんです。
「いや~、『週刊文春』を毎週読んでますよ。僕、『週刊文春』っていう雑誌があること知らなくて、この年になって初めて知りました」 (爆笑)。
すごいですよねこれ。週刊文春の人、本当死にたくなったと思いますよ。電車乗ってるとき車内つり広告も見たことなかったんですね。
博士:今はスキャンダル雑誌で『文春砲』なんて言われて、日本で一番売れてるみたいでいるけど。
町山:照英さん、知らないんだから。
博士:そうそう。女の子なんかも記事を知ってるだけで、具体的に『週刊文春』の連載の執筆陣の誰かを追ってるってことはないと思うんですよね。だから町山さんもよく、「文春で書いてることの反響なんか、ツイッターで書いてる反響に比べたら無い」って言いますよね。
町山:僕が文春に何か書いても、全然バズらない。でも、まったく同じことをツイッターでちょっと書くと何千もリツイートされる。ちょっと悲しいですね。
博士:それは作家としての悲しさだし、それでも俺は、諦めずに、もう一度、文章で反響を起こそうよって言ってることだし、読書人、今日こうやって観客として来てくれる人たちは読書人だと思うんです。でも読書人が追いやられるっていうか、要は無教養主義になっていく世の中が広がっていて……。無教養主義っていうのは、ボクは大きく言えばリベラルじゃなくなるっていうところだと思ってるんですね。津田大介さんなんかが、「ネット上の争いでは、リベラルは99%負ける」と言うけど、「待ってよ、まだ1%あるじゃん! 勝ち目あり!」っていうのが、俺の思いですよ。
町山:だけどね。勝ち負けで言うと、リベラルって勝つこと自体が権力的だと思ってるから勝てない、それは。だからリベラルなんかどうでもいいから、とにかく勝てばいいと思ったほうが勝てますよ。それは俺はいつも思ってる。
博士:その勝ち負けを俺は言論界でやってるわけじゃないし、あくまで、お笑いだから、俺は権力者、政治家、偉そうな人は、とにかく、からかうのよ。職業的な使命はそこですよ。
町山:博士が自分は芸能界の内部にいないと感じるのはそういうところなんですか。
博士:でもそれは町山さんが教えてくれたと思いますよ。たけし軍団は、そもそもパワハラとセクハラを中心とした愚直な芸能ですから。本当に。80年代的な。
町山:言えないもんね、何があったか。
博士:パワハラの「ガンバルマン」の延長と、井手らっきょさんみたいにフルチンになって騒いでるセクハラだけですよ。本質は、でも、ボクを含めてそういう芸をやりたくて入ってきたし、そのなかで育ってきたし、その芸人の世界で成長したから。
それこそTBSラジオ『ストリーム』で町山さんのコーナー「コラムの花道」を聴くようになってからじゃない。世界の中にこういう笑いの観念があるとかさ、差別意識やポリコレみたいな概念とか、そういうことがわかるようになったのは。
町山:そうなんですか?
博士:本当にそうなんですよ。それまで必死でしたよ。芸人のサバイバルゲームに。日々、やっていることは三又と変わってなかったですよ。リアクションしなきゃとかね。一日全裸で過ごすとか、そんなことばっかやってましたよ。主に鬼軍曹だったダンカンさんと一緒に、最終的には人間サイコロで腰を壊して、椎間板ヘルニアで歩けなくなって、今じゃ、軍団の傷痍軍人になっちゃってますけど(笑)。(三回へと続く)
(2017年11月30日〈文春トークライブ 第20回〉
町山智浩×水道橋博士『言霊USA』vs.『藝人春秋』より)