松本人志にめちゃくちゃウケた三又又三の秘芸 『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』(2)

(前回より)
『水道橋博士×町山智浩 がメッタ斬りトーク』 週刊文春が掲載を諦めた「禁断の対談」を公開!(1) | TABLO

「小倉智昭さんには暗喩としてのヅラしか書いていない」(水道橋博士)

博士:連載の第1回目が掲載された時に、能町(みね子)さんが、この文章はどれだけ仕掛けがあるんだ? ってtwitterで呟いていて。橋下徹の一回目。掛詞や韻、ギャグの数とか。これは一回目のときだけでも、本当に入れてるんですよ。これはこういう風にかかってくし、ここには韻を踏んで意味を持つとか。

町山:そうそう。そういう意味では一番分かりやすいのは小倉さんのところ。小倉智昭さんについて書いている文章が凝りまくりでね。下巻のP24。ちょっと読むね。

 平成のテレビ界のもはや重鎮である小倉は、もともと帝国石油の技術者を父に持つ、生まれながらの毛並みの良さを誇るサラブレッドだ。

 ただし、毛を以って馬を相すことなかれ、家柄に恵まれたからといってヌクヌクと育ったわけではない。その人生には人知れず、小倉の頭を悩ませた数々の挫折も待ち構えていた。

 今でこそ、フジテレビの朝の顔として長年親しまれているが、決してフジ「生え抜き」のアナウンサーではなく、就活時代には同局の最終選考まで残りながら最後の最後でツルッとすべり落ち、吠えヅラをかかされた因縁もある。

 すべり止めで受けた東京12チャンネル(現・テレビ東京)で晴れて局アナとなるも、大橋巨泉に誘われてフリーに転身。電気ガス水道を止められるほどの食えないどん底生活を経て、やがて大ブレーク。局アナからフリーで成功するというキャリアパスのパイオニア的存在ともなった。

 もちろん、司会業のみならず飲食店経営など、実業家として二毛作で稼ぐ手腕も有名である。

……とかね。全部毛についての言葉だけで説明してある(笑)。

博士:暗喩としての「ヅラ」っていうことしか書いていない。でも、ストーリーとテーマ性を保っている。

町山:どんだけしつこいんだ()。でもね、どこにもヅラとは書いてない。毛のことわざとかが並んでいるだけなんですよ。全編これだから、凝りすぎだよね。

博士:凝りすぎと言うより、カブせすぎなんだけど(笑)。驚いたのは、小倉さんはこの連載を読んでいたんですよ。『たかじんNOマネー』で、ボクが生放送を降板する事件っていうがあって、この本、下巻にその真相を書いてますけど。
その時、事件を起こした翌日に小倉さんが司会の『とくダネ』が取材に来たんですよ。ニッポン放送の青山さんとの特番、(『青山繁晴・水道橋博士のニッポンを考えナイト』)を終えて出てきたところでマイクを向けられて、「博士どうだったんですか!?」って、俺、事務所から「絶対無言で行き過ぎてください」って言われてたから、無視して通りすぎるだけなんですよ。
で、『とくダネ』でどういう風にあれを報道するのかなって翌日テレビを見てたら、小倉さんが、俺の映像を見ながら「いや、ワタシは水道橋博士の本や連載は読んでます」って言われた、そん時の俺の驚きぶり。シャッポを脱ぐとはこういうことかと(笑)。申し訳ございません!! と。
「彼はコメンテーターというより文章家ですよ」って言ったんですよ。「え、読んでんだ~!」って言うのが一番驚きじゃないですか。それでスタッフルームかなんかに、これみよがしに、オヅラ話しか書いていない、この『週刊文春』が置いてたらどうしようって……

町山:ひゃっひゃっひゃ(笑)。いや、これだけ凝ってて、仕掛けがすごいあって、しかもほとんど、上巻で振ったネタが下巻で回収されたりするのもすごいですよね。

博士:上下巻にすることによって、上巻で振ってるものを下巻で回収するっていうのを、しつこくやってますが、これは長い映画を見せるときにインターミッションっていうのも上巻の終わりに設けているほど、映画のイメージがあるんですよ。エンターテインメント、後半は『藝人春秋』の『1』の時も、「冬」に向かって「死」を扱っているからだんだんとトーンが暗くなっていったけど、これもそういう意味じゃ、『007』を見たときの最後のどんでん返しの驚きを味あわせたいっていう気持ちで作って、色んな仕掛けがあるんで、順番通りに読んでラストを最後に読んで欲しいんですよね。
ずっとラストシーンは「袋とじ」でやりたい、って企画を進行させていたんですけど、値段上の問題で出来ませんでした。