【徹底解説】東京オリンピック開催で再び暗躍か? アパホテルが12億も騙し取られた詐欺『地面師』の実態
なぜ他人の土地の登記が出来るのか?
では、地面師はどうやって他人の土地を売り飛ばしたのでしょうか?
一つには権利証や印鑑証明書の偽造です。地面師の背後にはプロの書類偽造グループがおり、「法務局登記済」の公印が押された権利証や所有者の印鑑証明書を精巧に偽造してしまうのです。
昭和の時代に登記した権利証は紙も黄ばんでおり、ホッチキスの針も錆びていることがあります。地面師はわざと日焼けして黄ばんだ紙や錆びたホッチキスの針を使い、昔の活字を使って権利証を偽造するため、司法書士や法務局の登記官ですら騙されることも少なくありません。
また、所有者の住所をこっそり変更し、「代金を払ったのに登記してくれない」と内容虚偽の訴訟や調停を起こし、偽の所有者を出廷させてわざと敗訴させ、裁判所を騙して所有者の名義を書き換えてしまうことすらあります。
地面師の犯罪が早期に発覚したのはなぜか?
では、アパ・グループの事件はなぜ発覚したのでしょうか?
現在の印鑑証明書はコピーすると『複写』『無効』などの文字が浮き出るので、高額な物件の登記の場合は、登記官が念のため印鑑証明書のコピーを取り確認したのかもしれません。
あるいは、早く登記するよう急かす不審な電話がかかってきて警戒し、一層慎重に書類を確認したのかもしれませんし、もしかしたら、ベテラン登記官が長年の経験と勘から書類の不自然さに気付き区役所に確認したり、登記済印の印影がどうも変だとピンときたのかもしれません。
次に、どうしたらこの地面師の被害を防げるのか、を「後編」で詳しくご説明しましょう。(取材・文◎駒場文一)
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