大好きだった“友人のせい”で覚せい剤をまた始めてしまった男 一度使えば完治することは絶対にない恐怖の麻薬

覚せい剤を1度だけ使用した後、彼は自ら警察に出頭しました。

覚せい剤をやめようとする自分、覚せい剤をやめられない自分、そのせめぎあいの中で彼は自首という手段を選びました。数年間の実刑は免れないことはわかった上での決断です。

「またはじめから…1からやっていくしかないと思いました。懲役に行ってやり直します。頼れる人も身内もいないし、それしかないと思ってます」

服役期間や、やめることに成功していた数年間を除いても覚せい剤の使用期間は十数年に及びます。その依存の度合いはかなり深いものだと判断せざるを得ません。断薬は相当な困難を伴うと思われます。

「使ってしまった時までは『完治』をしたと思ってたんです。でも違いました。『完治』ではなく『回復』でした。『完治』はもうしないとわかりました。『完治』という言葉はないんだと肝に命じながらやっていきます」

彼が今後、覚せい剤をやめることができるかどうかはわかりません。もしも誰か、彼の苦しみを分かち合い共に歩んでくれる、そんな人に巡りあえればその可能性は高まると思います。

しかしもし、彼と向き合う人間が誰もあらわれず彼の孤独に寄り添う存在が覚せい剤以外に何もないという状況になれば…その時に覚せい剤を使いたいという欲求の歯止めになるものは何もありません。

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警視庁のホームページによると、覚せい剤事案における50歳以上の高齢者の再犯率は8割を超えています。違法薬物に関しては「回復」はあっても「完治」はありません。一度覚せい剤に頼ってしまえば、薬物依存症との戦いは一生続きます。(取材・文◎鈴木孔明)