8月25日付けの産経新聞の一面を飾った元国会議員公設秘書らによる医大裏口入学斡旋疑惑は、永田町で大きな話題になった。
「就職はともかく、入学の斡旋はしないことにしている。いまどきそんなことをしたら、捕まってしまうからね」
随分前に、ある年配の秘書さんがそう教えてくれた。また別の秘書さんから、こんな話を聞いたこともある。
「就職でも入学でも、有力な支持者に頼まれたら『嫌』とは言えない。とりあえず依頼は受けておいて、合否の結果だけ先に入手する。受かっていたら『難しいようでしたが、頑張ったのでなんとかなりました』と報告すればいいし、ダメだったら『私どもも頑張りましたが、お子様の点数が合格点からかけ離れて低かったので、どうしようもありませんでした』と神妙に言えばいい。いずれにしても、謝礼はこちらからは要求しない」
要するに、事後に先方が自発的に謝礼を持ってくる場合は、「違反」にならないとのこと。
ところがこのケースでは、事前にちゃっかりと「謝礼」を受け取っていた。報道によると、金額は合計で4100万円にものぼるとか。さらには合格もさせていないし、こりゃまずいわ、完全にまずいわ......。
しかもやったのが65歳のベテラン秘書。もともとは公明党議員の秘書を務めていたが、自民党の山口泰明議員事務所に転職。政権交代が起こった2009年の衆院選で山口氏が落選したため、当時は民主党衆院議員だった中津川博郷氏の政策秘書になったらしい。
その後、自民党の新人議員である小倉将信衆院議員のもとで地元担当を務めていたとか。選挙区が実家から遠かったので、ワンルームマンションを借りて単身赴任をして頑張っていたとのこと。しかし昨年の参院選あたりで、この元秘書の消息はぷっつりと途切れたという。孫を合格させてもらえなかった依頼者から苦情が来て、逃げたのかもしれない。
この疑惑は、もし依頼者の孫が実力で医大に合格していたら発覚しなかったはず。元秘書はそういう肝心なところを、事前にチェックしなかったんだろうか......。いや、裏口入学斡旋は絶対にやってはいけないことです!
Written by 安積明子
Photo by Magdalena Roeseler