Photo by デコまん アソコ整形漫画家が奇妙なアートを作った理由
"芸術家"のろくでなし子が逮捕された。彼女が創作活動の一環として行った、クラウドファンディングで資金を募って完成させた"マン型ボート"のプロジェクトと、その際に使用した3Dプリンター用データを寄付者へのお礼として配布した行為が、わいせつ物をばら撒いたと看做されたようだ。
この件は様々なメディアが報じているが、最も冷静に伝えているのはITメディアではなかろうか?
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3Dプリンタで性器の造形を出力できるデータ配布 漫画家「ろくでなし子」逮捕
(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1407/14/news072.html)
各社の報道によると、警視庁は7月14日、3Dプリンタで女性器の造形を出力できるデータを頒布したとして、「ろくでなし子」の名前で活動している女性漫画家をわいせつ電磁的記録頒布容疑で逮捕した。漫画家は「わいせつ物とは思わない」と容疑を否認しているという。
漫画家は「デコまん」という「自分の体のまん中部分をモチーフにしたアート活動」を展開しており、「デコまん~アソコ整形漫画家が奇妙なアートを作った理由」「女子校あるある」などの著書がある。
(以下は引用元で)
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これ以外のメディアは警察発表をそのまま垂れ流しているようで、まずろくでなし子を"自称芸術家"としてしまっている。彼女の活動歴や、世に発表した創作物の量を考えると、「ろくでなし子は自称芸術家である」という言い様は無理があり過ぎる。自称というのは自分で言っているだけで、活動実績などが確認できないから"自称アーティスト"だとか"自称自営業"と報じられるのだ。ところが、ろくでなし子は様々なメディアに露出し、作品を発表し、他称としても"アーティスト・芸術家"として認められているのだから、この時点で"自称"はおかしい。典型的な警察による印象操作・誘導と、後先考えずにそれに乗っかるメディアの無能さである。
ではなぜ警察はそんな姑息な真似をするのだろうか?
ここから先はすべて私個人の想像になるが、警察としてもろくでなし子の逮捕にひけ目を感じているのではないだろうか? だからこそ、彼女のマン型ボートや3Dプリンターのデータを"芸術・作品"として認める訳にいかず、逆算的に「じゃあろくでなし子を芸術家とは呼べないよね」という判断になったのではないかと思われる。「我々は芸術家を逮捕し、芸術活動を封殺したい訳ではない」という言い訳の為に、彼女は自称芸術家なんて肩書きにされてしまったのだ。
次になぜよりによってろくでなし子が狙われたのかについてだが、これは別にろくでなし子じゃなくとも良かったのだろう。警察が恐れているのはろくでなし子の性器ではなく"3Dプリンター"という新しい技術であろうからだ。
警察はとにかく新しい技術が犯罪に使われることを恐れる。しかし、我が国は社会全体が天下り団体様などで雁字搦めになっているため、新技術に即座に対応して法整備するという動きが取れない。下手な文面を作ると既存の利権まで崩壊しかねないし、財界からの圧力で政治生命を絶たれる可能性まであるからだ。
となると、警察は今現在ある法律をこねくり回してなんとかするしかない。理想を言えば3Dプリンターを使った銃器などを作る人間が続出してくれれば良かったのかもしれないが、残念ながら今年6月に川崎の大学職員が捕まって以降、同じような事件は起きていない。
そこで目を付けられたのが"一年以上前にクラウドファンディングで資金を集めて実行されたマンボートプロジェクト"だったのだろう。生贄が欲しければわいせつ物・エロという、いつもの警察の浅はかな思考である。警察の考え方では、女性の性器は拳銃と同等の危険物だということだ。ろくでなし子氏には、今後は「股間に銃器と同等の武器を持つ芸術家」として活動して頂きたい。
ただ、本人の口ぶりから彼女も以前から「もしかするとマズイかも」と自覚はしていたようなので、必要以上に庇いはしない。彼女なりに覚悟の上で活動しているはずだから、間違った庇い方をすると彼女の芸術家としての戦いを邪魔してしまうことになる。
しかし、最後にこれだけは指摘しておきたい。はたして今回の件で逮捕の必要があったのだろうか?
事件が起きたら逮捕が当たり前と考えるひとも多かろうが、実はそれは大間違いである。通常逮捕の場合、逮捕状が出されるには以下のどれかの条件を満たさねばならない。
1 逃亡のおそれがある場合
2 証拠隠滅のおそれがある場合
3 住所がわからない(住所不定)
さて、ろくでなし子は上記3つの内のどれかに該当するだろうか? あれだけネット上に証拠を残しているのだから、まず証拠隠滅は無理だ。次に覚悟の上での活動なのだから、逃げも隠れもしないだろう。ホームレスという訳でもないし。
日本の警察は逮捕という行為自体に対して考え方が甘過ぎる。今回の一件など、あからさまに「新技術に対するオソレと威嚇」が目的だと素人目にも解る稚拙さだ。
現状で対応し切れない新技術が現れた場合、税金で食ってる身の人間がやるべきことはまず勉強である。次に無理のない法整備である。利権がどうの、財界の圧力がどうのとグダグダやっているから、技術の進歩に法も警察権力も対応できなくなるのだ。
拳銃の時はともかく、もし警察が3Dプリンターを使った犯罪行為を防ぎたいと考えるならば、このようなお粗末過ぎる恫喝逮捕でどうにかしようと思うのではなく、それこそ3Dプリンターのメーカーや、ろくでなし子のようにそれを使って活動する人間に頭を下げて内々で講義でもして貰えばいい。そこで技術に対する理解を深め、犯罪に使われる可能性や、抑えておくべきポイントを見定め、今後の捜査に活かせばいいのではないか?
警察が今のような前時代的な方法を振りかざしていると、誰も警察に協力しようとは思わなくなる。結果としてあらゆるモノが地下に潜って手も足も出せなくなるだろう。 それはより悪質な、そして深刻な事件を招く要因にもなり兼ねない。手遅れになる前に、多数の犠牲者が出る前に、ぜひとも考え方を改めていただきたい。
Written by 荒井禎雄
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