【待機児童問題】本当に解決する気あるのか?安倍政権のトンデモ対策案

2016年04月08日 トンデモ対策案 安倍政権 待機児童問題

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 待機児童問題を解消するためとして、政府がトンデモない対策案を持ち出した。なんと、現在定められている保育士ひとりあたりが受け持てる児童の人数を "増やす" ことで、「緩和による解消」をするというのである。

■政府中枢にいる人間達の無知さ

 政府の要職にある連中の普段の言動を見れば理解できたことだとは思うが、彼らは男も女も旧時代的な、限られた人間にしかできないような、「男が外で働いて女は家の中で子守」という価値観に支配されている。そしてそれを疑いもせず「キレイな日本を」と寝言を発する。それが最悪の形で表面化しようとしているのが、今回の自称・待機児童対策なのだ。

 そうした思考の持ち主が実権を握っている状況だから、いま末端の国民がどんな生活をしているか想像もつかない。したがって、待機児童がなぜ生まれるのかという根本的な部分を理解できない。そんな連中が無理矢理に何かやろうとひねり出したアイデアがこれなのであろう。こんな悲惨な話になるならば、何もしないでいてくれる方がまだマシだ。

■背筋が凍るほどの逆効果

 政府の発表によると、保育園の定員を増やし、保育士ひとりあたりの受け持ち人数も増やすといった方針の他に、保育園が決まるまでの間の一時的な預かり場所や、保育士の待遇改善なども盛り込むという。

 だが、今回の発表で特に重きが置かれているのは、定員を増やす、受け持ち人数を増やす、預けられる場所を増やすといった、「とにかく受け入れ人数を増やせばいいんだろ」という点であり、これは保育士や保育環境の劣化に直結する。

 我が家にも1歳を少し過ぎた息子がいるが、これがお陰様で元気というよりヤンチャ放題で毎日毎日大暴れ。1歳にもならない内から近所の公園を駆けずり回るようになってしまい、親が想像するよりもすばしっこく、気が付くと視界から消えているような難物である。こんな言葉も満足に通じない暴走特急のような子供を、ひとりの保育士が何人も抱えるなど、下手をすれば幼児の死亡事故をも巻き起こす無理難題であろう。親がマンツーマンでも片時も目が離せず、つきっきりでいないと危ないのだから、いくら環境が整備された保育園とはいえ管理には限度がある。

 さらに、政府の案では保育園以外の場所でも子供を預かれるようにとされているが、最初から幼児の年齢・月齢に合わせて作られた環境でなければ、保育士にかかる負荷が尋常ではなくなる。場当たり的に用意された空間で、言葉で言うことをきかせられない1~2歳の子供の面倒を見るとなれば、安全のために保育士の受け持ち人数は減らさねばならないはず。それを増やすことしか考えていないのだから、正直お先は真っ暗である。

 保育士の待遇改善の面では、給与を数%程度上げるだとか、近隣の保育士同士が連携して休みを取りやすくするといった案も出ているが、いざこの案が実現してしまえば、そんな話は忘れ去られるだろう。給与面での帳尻合わせはできたとしても、残業・休日出勤・長時間労働などの波に飲み込まれることは目に見えている。なんせ他業種の労基法無視のブラック企業問題すら満足に解決していないのだから、こんな約束事が実現するわけがない。だったら先に労基法の厳守を財界の連中に飲ませてみろという話である。法やルールはあるだけでは意味がなく、守ること、しっかり運用されることこそが重要なのだ。

■少子化に拍車

 仮にこうした対策案が現実に履行されたとして、まず考えうるのは人材派遣業界や介護業界と同じ道を歩むことである。この2つの業界も、様々な新ルールや法律が設けられた当初は、それはそれは夢のような聞こえのいい言葉で飾り立てられていた。そこに人の弱みに付け込む悪どい連中が大挙して流れ込み、今やブラックの代名詞と化し、他に選択肢のない負け組が流れ着く流刑地のような扱いになってしまった。国の将来を担う子供達を預かる保育園がそうした業界と同じ歴史を辿るとなったら、本格的に亡国一直線になるだろう。

 例えば、一件でも死亡事故が報じられれば、共働きの夫婦が「保育園に殺されるくらいなら、子供を作るのは少し待とう」と考えても何ら不思議ではない。そんな事件が立て続けに起きれば、「保育園に子供を預けるリスク」が当たり前のこととして定着してしまう。そのような状況で、誰が好き好んで子供を産もうと考えるだろうか。

 少子化と待機児童問題は密接に繋がっており、保育園の受け入れ人数を無理やり増やせば待機児童が減り、そうなれば安心して子供を産んでもらえるなどと考えるのは大間違いだ。子供の命が関わる局面で、「帳簿上の数字があってればオッケー」などというお役所思考を持ち込むのは勘弁していただきたい。

 政府が待機児童問題に目を向け、動いてくれようとしている点は評価するが、それでも出てきた案が最悪すぎる。国の未来がかかった話なのだから、その場凌ぎのヤッツケ対応だけは絶対にさせてはならない。何でも緩和すればいいわけじゃないという話は、小泉政権時代に散々学んだことではなかったのか。

 とにもかくにも、金の臭いを嗅ぎ付けて妙な連中が入り込んで来ないように監視する方法と、もしもの場合の罰則規定、それと子供達の安全をいかに保障するかの3点についてだけでも、具体的な案を示して欲しい。それが無ければ、危なすぎて子供を預けたくても預けられるわけがないだろう。

Written by 荒井禎雄

Photo by Fabrice Le Coq

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