「夢がかないました」
第1回目の佐久間宜行さんの放送は、ひたすらはしゃいでました。まるで少年のように。「夢はかなう」を連発。ラジオ、特にオールナイトニッポン大好き少年が43歳にして夢の番組のパーソナリティになりました。そのことが心から嬉しい。それが本当によく伝わる放送でした。勢いだけではありません。喋りが上手い。「この人、本当にサラリーマンなのか」と思ったほどです。
佐久間さんを知らない人がいるかも知れませんが、テレビ東京の社員プロデューサーにして、人気番組「ゴッドタン」を作った人、と言えば分かりやすいでしょう(その他『ウレロ☆未確認少女』など手掛けた番組多数)。毎週月曜から金曜夕方の5時30分からの生放送「青春高校3年C組」のプロデューサーでもあります。要するに業界では有名なテレビマンです。
第1回目の放送内容はとにかく熱かったです。それとお笑いを良く知る人だけあって、話にオチをつける、声の通りが良い(ラジオはこれが大事です)、リスナーにほどよくいじられる。それをうまく返すなどなど。
それはまさに、僕たちが中学生の頃聴いていた「深夜ラジオそのもの」でした。味がありました。
そんな佐久間さんに2回目の放送を終えた後、お話をうかがってみました。
※ ※ ※
――お疲れ様でした。1回目が終わって今日は2回目。違いはありましたか?
「1回目はとにかく中井りか(NGT48)がゲストで来るまでにたどり着けば何とかなるかなって思ってたんですけど、でも今回は一人喋りだから、打合せもひっくるめて長いし、90分一人で喋れるかなって思いながら始めましたね」
――僕もブースの外で聴いていて、話が面白くて濃いなと思って、ふと時計を見たらまだ10分、20分しか経っていないんだ、と思いました。
「いやあ、90分って長いすね」
――でも、佐久間さんて、天才ですよね。
「違いますよ!(笑)」
――だってよく90分も喋れるなと。
「でも、楽しかったなー(しみじみ)」
――え? そうすか。
「はい」
――全然疲れないですか? 90分終わっても。
「ああー、疲れないす、疲れないす」
――凄いです。でも僕は『オールナイトニッポン』を聴いて育ったんですが、当時の雰囲気が出ていました。
「あ、本当ですか。それは嬉しいなあ」
――ラジオとテレビの一番大きな違いって何でしょうか。
「ラジオは嘘がつけないですよね。テレビは編集できますから。嘘がつけないから喋っている人間の素みたいのが出てくるなとは思いますね。それが逆に魅力だなとは思いますし」
――佐久間さんは、育った福島県いわき市で学生時代、『オールナイトニッポン』を聴いていたんですよね。
「そうです、そうです。福島のいわき市って言うのは海沿いだとニッポン放送が入るんですよ。で、(電波の)調子が悪いと入らないから、その時はラジオ福島とかで聴いていたけど、基本的にはニッポン放送は入ったんで伊集院光さんの『オールナイトニッポン』の二部とか、そのくらいの時が僕が聴き始めたころですね。まだとんねるずもやってたし」
――そう言えば佐久間さんて、伊集院光さん的な声していますよね。
「ああ、そうそうそう。それね、体型が多分(笑)」
――何で、そんなに話が上手なんですか?
「いやいや、そんなことないけど(笑いながら声が裏返る)」
――本当ですよ。一回目放送は勢いが伝わってきたんですけど、二回目は少しこなれてきたような感じがしたんですよね。手ごたえはありました?
「それは、ちゃんとやれたなという風には思うんで。フレッシュさを保ちながら、こなれ過ぎないように楽しんでやりたいと思います」
――放送で心がけていることってありますか?
「ベース一年(の放送)じゃないですか。『オールナイトニッポン』って。一年で終わっても人生が悔いがないように、こなれ過ぎないように、楽しんでやろうと思って。だから仕事じゃないですからね! これ。やっぱり、何が一番違うかっていうと、これ(ラジオは)仕事じゃないですっていう点です」
――なるほど。
「はい。だから部活っていうか。僕の楽しみ(笑)。だからその楽しみを前面に出していこうと思っています」
――でも、本当聴いていて「パーソナリティ」って感じがしましたからね。もはやプロデューサーじゃないですよね。
「いやいや、プロデューサーですよ(苦笑)」
ーー選曲とかもご自分で選んでいるんですか?
「そうです」
――それってパーソナリティの特権ですよね。
「そうそうそう。だから嬉しいですよね。曲を選べるってそんな凄いことが(しみじみ)」
――番組でリスナーからいじられていましたけど、いじられキャラって望んではいないんですか?
「望んでいないです。本当はカリスマ・ラジオスターを目指していたんですけど(笑)。最初にボタン掛け違っちゃったみたいで、それはしょうがいないです」
――いいんじゃないですかね。とんかつの話(※radikoのタイムフリーでチェックしてください)も何でそんなに話してから反省しているのかなと。
「ハハハハ! いや、でも何の話してんだか。オチもねえ話し始めたなと思って」
「とんかつの話は後悔しています」
――今日の方が緊張しました?
「始まる前は今日の方がしました。何となくこれを話そうかなと思っていたフリートークを話し終わってもまだ、80分くらいあるから、あれ? 結構あるなとか(笑)」
――大変ですね、喋りって。
「いやいやいや。でも『楽しみ』です」
――SNSの評判も良かったですよ。ラジオの向こうの人ってどんな人か分からないじゃないですか。
「ああ、それはどんな人っていうか、この時間にラジオ聴いているっていうことは、まあ、お笑い好きもいるかも知れないですけど。家で一人で...その時間は寂しいんだろうなっていう人だったり眠れなかったりする人だと思うんで、そういう人にとって、ちょっとでもオジさんがたくさん喋ってたりするのを聴いて笑ってくれたら一番いいなと思いますね」
――学生時代の佐久間さんのような人が聴いていると。
「そうです、そうです。だと思います」
――学生も社会人もこの時間まで聴いて、眠い目をこすりながら学校や会社に行くんですよね。
「そうだと思います。それはそれでいい思い出ですよね。人生そういう事があった方がいいと思います」
――これからお笑いの裏話やサイドストーリー以外に、そういった話もしていくんですか?
「青春時代の話ですか? ああ、それは僕っていうパーソナリティに興味を持ってもらえるようになったら話そうかなって。今はリスナーにこのラジオ面白いってなって欲しいんで」
――あと、「怒ったら本当に怖いキャラ」は狙っているんですか?
「本当に狙っているっていうか(笑)。あまり僕は怒らないので」
――怒った事ないんですか?
「僕、怒らないんですよねぇ」
――不思議ですね。僕、たまにスイッチ入っちゃうんですけど。
「ハハハハハ。僕、豪さん(吉田豪氏。プロインタビュアー)に近いと思います。僕も豪さんと話すけど、ゴシップとかについて怒らないんです。多分、それに近いと思います」
――放送終了後にお時間取って頂いて有難うございます。最後にアレをお願いできますか? 「メディアの未来を」ってやつです。
「『我、メディアの未来を担いし者なり! 佐久間宜行のオールナイトニッポン0(ZERO)!』」
――有難うございました!
「これ、仕事じゃないですから。楽しみです、僕の」
※帰り道、ニッポン放送の前で出待ちをしているリスナーが何人かいました。さすがです。佐久間さん。(聞き手◎久田将義)