いま「避妊具自販機」って激減してる? 既に“大人になっていた”平成を振り返ってみた|中川淳一郎
もう3時頃にはなっているだろう時間に住宅街を猛ダッシュしていればそりゃ怪しまれる。パトロールをしていた警官から「止まりなさい!」と声をかけられた。職務質問だ。
「こんな時間に何をやっているんですか?」
「えっとぉぉ、自販機を探しているんです」
「何の自販機ですか?」
僕はここで「カルピスの自販機を探しておりまして」などとウソをつこうかとも思ったが、まさかカルピスのためだけに必死の形相で走り続けるなどあり得ない。もしも警官が「カルピスの自販機だったらすぐそこにありますよ。ついていきましょうか」と言ったり「なんでそんなにカルピスが飲みたいのですか? コカ・コーラの自販機じゃダメなんですか?」と質問をしてきても明確な答えは出せないだろう。ならば本当のことを言うしかない。僕は意を決してこう警官に伝えた。
「ひ、避妊具の自販機です!」
警官はまさかの不意打ちにガクッと来てしまい、急激に鋭い目つきが、困惑した目つきに変わった。
「ほ、本管は避妊具の自販機の場所は分かりませんなぁ。お、おつかれさまです。ご協力ありがとうございました」
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かくして職質からは逃れられたのだが、そこから避妊具の自販機を発見するにはあと20分走り続ける必要があった。ようやく見つけ、300円だかの大金をぶち込んで小箱をGジャンの内ポケットに忍ばせ駒場寮の部屋に戻ったら智子はいびきをかいてグースカ寝ていた。
「智子、買ってきたぞ」と僕は言い、彼女を起こした。
「あ、中川くーん、お帰り~。やろー、やろー」