自分は処方箋をもらう権利なんてないし、人一倍に性格がだらしないだけかも…という不安の先|成宮アイコ

<人の優しさを受け止めるために>

それから2週間経ちますが、今もまだ、自分は処方をもらう権利があるのだろうか、という不安が残っています。

それを言ったら、「それわかる」と言ってくれる人がたくさんいました。みんながそれぞれお互いに、みんなは大変と認め合っている。そして自分だけは「自分がだめだからかも」なんて思ってしまう。人のことなら軽々と認められるのに。
その落差を考えると笑ってしまいそうです。

わたしたちは人に起こったことならば怒ったり、悲しんだり、心配をすることができます。そして、他人のことならばすぐに認めることができます。失敗をしても、「そういうのあるよね、でも頑張ってるじゃん」と。
それは反面、「なのに自分は頑張ってないから失敗する権利はない」という気持ちに結びつきます。自分に対してはすぐ自業自得と思ってしまう。

あるいは、人からそう言ってもらう場面になっても、「全然頑張ってないよ、なにも頑張れなかったんです、本当に自分はだめです」なんて言ってしまう。

どうやら、人の優しさを受け取るには、心にすこしの余裕が必要のようです。今は、自分に優しくしてあげるというところまでは、とてもたどり着けそうにありません。それならばせめて、人の優しさを優しさとして受け止めることくらいできるようになりたい。

そのためには、こうして自分に似た人の存在や気持ちを知り続けることがいいような気がします。その積み重ねのうちに、つい卑下しがちな自分自身の扱い方もいつか変わっていけるでしょうか。(成宮アイコ・連載『傷つかない人間なんていると思うなよ』第三十回)

文◎成宮アイコ
https://twitter.com/aico_narumiya
赤い紙に書いた詩や短歌を読み捨てていく朗読詩人。
朗読ライブが『スーパーニュース』や『朝日新聞』に取り上げられ全国で興行。
生きづらさや社会問題に対する赤裸々な言動により
たびたびネット上のコンテンツを削除されるが絶対に黙らないでいようと決めている。
2017年9月「あなたとわたしのドキュメンタリー」(書肆侃侃房)刊行。
EX大衆、Rooftopでもコラム連載中。
2019年皓星社より朗読詩集「伝説にならないで」の発売が決定。