勝手に他人をかわいそうな人にしてしまう癖|成宮アイコ

わかりやすく目に見えることだけが現実ではないのに。それに、わたしのように、ひとりでいる時間が1日の半分以上は欲しかったり、ひとりでご飯を食べるほうが安心をするような人なんてたくさんいるのに。

あんなに真剣に悲しい気持ちになったり、他人を勝手にかわいそうな人に仕立ててあげては胸を痛めて立ち止まってしまうのに、こうして人に話したり、あらためて書き出してみると、「なにがクシのついたドライヤーを使っていじらしいだよな…」なんて笑えてくるのだから、やっぱりひとりだけの世界にはできるだけ帰りたくないなと思うのでした。

帰り道、ナンをちぎった自分の手からインドカレーのスパイスの匂いがして「手からカレーの匂いがする」とLINEを打ちながら、自分のくせにインドカレーなんて食べちゃって…と一瞬だけ思ってから、なんでもないただの毎日のこと!と力をこめて余計な考えをふりはらって送信ボタンを押しました。(文◎成宮アイコ 連載『傷つかない人間なんていると思うなよ』第三十二回)

 

成宮アイコ

赤い紙に書いた詩や短歌を読み捨てていく朗読詩人。朗読ライブが『スーパーニュース』や『朝日新聞』に取り上げられ全国で興行。好きな詩人はつんく♂さん・好きな文学は風俗サイト写メ日記。夢はアイドルへの作詞提供。2019年皓星社より朗読詩集「伝説にならないで」刊行。ほかの書籍に「あなたとわたしのドキュメンタリー」(書肆侃侃房)がある。EX大衆、Rooftopでもコラム連載中。

 

あわせて読む:【追悼再掲】口腔底がん余命三年宣告でもオイラは歌う! 壮絶『オナニーマシーン』イノマーの言葉を聞け|暴走対談 | TABLO