勝手に他人をかわいそうな人にしてしまう癖|成宮アイコ

ひとりの世界には帰りたくない

この癖のことをインドカレー屋さんで友人に話していたら、「ドライヤーって言えばさ、さっきエレベーター一緒だった人たちすごい髪型決まってたね」と言われました。わたしの両親くらいの年代のグループで、確かにすごく華やかでおしゃれだったような気がします。これからライブでも行くのかなーいいなー、と思ったのは覚えています。でも、わたしは髪型のことにはなにも気がつきませんでした。これほど、勝手に他人の行動を見ては自分の中で悲しいストーリーを作ってしまうのに。

そうか、どうやらこの悪いくせは目に見えて楽しそうな人には湧き起こらないようです。

人が幸せかどうか、楽しいかどうかは他人には見えません。星の王子さまでキツネが言ったように、いちばんたいせつなこと、人の命や感情は目に見えません。確かに、楽しいときには声をあげて笑いますが、悲しいときでもそれに気づかれないようにいつもよりもっと多く笑う日なんて思い出したくないくらいたくさんあります。そういう日に言われる、「今日は元気だね」の言葉。なにもわかってねーなと悪態つきたくなる気持ちを押し込んで返す笑顔。その逆に、ひとりでお気に入りの喫茶店でモーニングを食べているとき、おいしいを噛み締めているとまったくの無表情になること。ラーメンズのDVDを眉間にしわ寄せて真剣に見てしまうけれど心の中では「めちゃくちゃに面白いな」とスタンディングオベーションをしたい気持ちのこと。