憑きもの体験記3「死ぬかと思った。冷たい手だったよ!」|川奈まり子の奇譚蒐集四十

……八王子で少女期を過ごしたせいで、民部に親近感が湧いた私である。

それはさておき、化け狐・猪鼻民部が移り棲むことになった川越の梵心山の所在地というのが、どうやら現在の〇〇百貨店の辺りだったらしいのだ。

そのため、そこには古くから民部稲荷というお社が建っていた。

けれども歳月を経るうちに荒廃してしまい、民部稲荷は川越八幡宮の境内に移された。さらに後の世となり、〇〇百貨店が梵心町(梵心山)で開業する運びになると、同地の民部稲荷跡は撤去されることになった。

しかし、一説によれば、民部稲荷跡を取っ払って社屋兼店舗を建てようとしたところ良くないことが起きたため、〇〇百貨店では、店舗の屋上に改めて民部稲荷の分社を建立し、事業の守護神として大切に祀るようになったのだとか。

と、いうわけで、陽炎のようだったりボーッとした男だったり髪の長い女の姿をしていたりした怪しいものの正体は、狐だったのかしら。

いやいや、川越には他にもまだまだ物の怪や幽霊の言い伝えが存在するから、早計に決めつけるのは如何なものか。結局よくわからない。川奈まり子の奇譚蒐集四〇・連載)

 

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