「クレージー・ランニング」が生んだ万引きマラソンランナー 原裕美子が苦しんだ過酷な体重制限
かつて、リクルートランニングチームで高橋尚子などを育て、その後、原裕美子が所属したユニバーサルエンターテインメントの故・小出義雄監督は、恋愛について『世界的ランナーを目指すならしばらく恋はお預け』と題し、こう書いている。
(前略)ランナーとしての夢を叶えることと、恋を成就させることを同時に願っても、なかなか無理というものだ。人間、二兎を追うことはできないと覚悟したほうがいい。(中略)
(前略)私のクラブは(中略)高い目標を掲げ、勝負にこだわりながら、ランナーとしての大成を目指すクラブなのだ。世界を目標にする人間たちの集まりである。どんな恋も奨励するわけにはいかない。(中略)
ランナーが真に世界を目指せるのは、人生のほんの限られた一時期でしかない。生活を、青春を、すべてこの一点に投げうつ覚悟の強者が、世界中から集まってくる。少しでも甘さがあれば彼らには勝てない。チャンスは一度きりであり、それを逃がしたら、二度と巡り合うことはないのだ。
しかし、恋は違う。ほんの一時期だけ、恋には目をつぶったとしても、素敵な恋に出会うチャンスはまたいくらでもある。
この小出監督の言葉を笑止千万な言い草と否定するのは簡単だ。しかし、今日の日本のスポーツ界は未だ、この言葉を前近代的な妄言とは捉えない環境にある。
今年に入って、日大アメリカンフットボールから始まった、パワハラ、セクハラ騒動、しかし、この国のメディアは、決して事の本質に迫りはしない。一過性の出来事として目を瞑る。こういった現象は2020年の東京オリンピックが終るまで繰り返すだろう。(文◎高部雨市)
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