「クレージー・ランニング」が生んだ万引きマラソンランナー 原裕美子が苦しんだ過酷な体重制限

こういった体重制限によって、女子選手には摂食障害だけでなく、無月経や、骨密度の低下によりケガに苦しむ選手も多い。

あるランニングのシンポジウムで、元女子ランナーが語る摂食障害の光景が忘れられない。それは、チームメイトと電車に乗った時だったという。

「彼女は体重制限を受けていて、傍目にも、もうガリガリといってよい程痩せていました。ところが、その彼女が突然電車の中でスポーツバックを空けると、パンを取り出し食べ始めたんです。その時の表情というか状況が凄かったんです……。同じ電車に乗っていた女子中学生の子たちが驚いた顔で見詰めていたのが‥‥‥、忘れられないです」

実業団の女子選手が鎖された合宿所の中で、日常的には、走るためだけの体のケアをし、監督、コーチに言われたスケジュールをこなす。
その中で何が育てられるのだろうか。精神的にも未熟な年齢である。多様な人々と接することこそが彼女たちを育てる。しかし今日、こういった体重制限だけでなく、未だに恋愛禁止という実業団チームもある。