都市伝説拡散の背景にヤンキー文化 最恐都市伝説『犬鳴村』の前にあった『地図から消えた村・杉沢村』の真実|久田将義

季節は12月。青森市は当然、雪景色でした。

こういった取材はRPGに似ています。すなわち、街に行った際に一番、噂・情報が集まる場所、ドラゴンクエストで言う、「ルイーダの酒場」に行くのが良いのです。スナック(地元のお客さんから街の話が聞ける)、キャバクラ(キャバ嬢も都市伝説、オカルト好きが多い)でしょう。居酒屋もそうですが、客は飲食を目的に来ている人もいるので話すのを面倒くさがる人もいます。現に青森駅に着いたとき、居酒屋に行ったのですが店の人からは、青森の名物料理の話くらいしか聞けませんでした。途方にくれつつ、街をさまよっているとキャバ嬢の呼び込みにひっかかりました。新山千春似の美人。僕らはその美貌に魅せられ、彼女の勤務しているキャバクラに行くことに。

そこで楽しく酒を飲んでいる中、ころあいをはかって「杉沢村ってどこか知らない」と新山千春似のキャバ嬢に尋ねてみました。すると意外にも「マスターが知っているかも」と即答、マスターを連れてきてくれました。この店は夜12時過ぎるとサパーに店の形態が変わるとのこと。そのマスターが「杉沢村なら知っていますよ」と嬉しい答え。ネットで出回っている情報を言ってみると、まだ二十代と思しきマスターはにやりと笑いながら「ネット情報。あれは、杉沢村じゃないです。本当の杉沢村は違う場所にあるんです」と言います。

聞けばマスターは地元出身。結構なヤンチャをしていて、いゆる典型的なヤンキーでした。聞きはしませんでしたが多分、暴走族に入っていたと思います。「十年後、青森の繁華街を支配するのが夢」と語っていました。こいういった「街を支配する」「地元の顔になる」という発想も彼らの特徴です。暴走族からヤクザになるケースは多い訳ですが、ヤクザの語源も「役座」と言われています(諸説あり)。地元の顔役が街を守るため、という意味があります。街を支配するというか地元を守るという思考です。

東京からこの雪の中、杉沢村を探しに来たという変わり者に興味を持ったのでしょうか。「朝、店終わったら真の杉沢村に案内しますよ」とマスターは親切に言ってくれました。夜十二時になるとサパーになり、僕ら男性は居場所がなくなり、朝までぼんやりと過ごす事になりました。

朝、閉店後マスターが席に来てくれました。「行きましょうか」。マスターの車で「真・杉沢村」に出発です。マスターの車はフロントにキラキラ光る独特の飾り物(名称は分かりません)、レディース仕様の車でした。よく見たら新山千春似のキャバ嬢が運転していました。何のことはない、マスターの彼女だったようです。

車を走らせていくと、どうやら郊外に向かっています。雪がどんどん深くなり、轍も怪しくなるほど運転には危険な山中でした。これは地元の人間しか分からないでしょう。途中、ネット情報の杉沢村の跡とされている鳥居、猿田彦の石碑がありますが、「まだまだ向こうです。ここではないです」とマスター。