都市伝説拡散の背景にヤンキー文化 最恐都市伝説『犬鳴村』の前にあった『地図から消えた村・杉沢村』の真実|久田将義

これは今に始まった訳でなく、戦前では「日本に縄文時代からの原住民がいて未だに山中で生活している」というニュースが世間を賑わします。この原住民とは「サンカ」と呼ばれました。サンカは国籍を持たず、弥生時代に縄文人が山に移動し、日本語ではない独特の言語を使うといった人々。「瀬ぶり」と呼ばれるテントで山中を移動しながら生活をしていると言います。実際に、サンカと呼ばれる人はいたようで太平洋戦争中に秩父の長瀞でサンカと過ごした人の証言を『ダークサイドJAPAN』(元ミリオン出版)に掲載いたしました。

一時は陰謀論・都市伝説の類で、日本はサンカ出身の有名人がいて日本を牛耳っているというものがあり、元首相田中角栄氏もサンカだという噂まで広がりました。

ところが、サンカ伝説を広めたのは元朝日新聞社の三角寛氏で、独特の言語を持っていたという「ロマンの部分」ほとんどが彼の創作とされています。幻想が崩れましたが致し方ありません。

さて、映画『犬鳴村』(清水崇監督・東映)が公開され、本では『実話怪談 犬鳴村』(竹書房)が出版されました。初めに結論を申し上げると、都市伝説の広がりにはヤンキー文化がファクタの一つになっていると思います。

すなわち都市伝説の拡散の要因には

1・ネットの普及
2・ヤンキーの情報網

この2つが重要と思われます。

ヤンキー(暴走族と言っても良い)の特徴の一つとして、好奇心が多いという点が挙げられます。「知性」と言っても良いでしょう。彼らを取材していて気づくのは読書好きが多いと言う事です(漫画含む)。確かに、彼らに接した事がない人にとっては乱暴者・喧嘩好き・暴言を吐くといってイメージがあります。その通りです。が、もう一面として「読書好き=知識が豊富」「情報網がハンパない」といった面は忘れられがちです。

そして、犬鳴村伝説が広まった背景には廃墟ブームもありました。月刊誌『GON!』(ミリオン出版 現・大洋図書)では廃墟を掲載。それを参考に僕も『実話ナックルズ』『ダークサイドJAPAN』(ミリオン出版 現・大洋図書)でも廃墟や廃村跡を掲載しました。特に炭鉱で栄えた街は廃村化しているところが多かったです。その最たるものが「軍艦島」です。

『犬鳴村』以前から囁かれていた”地図から消えた村”を訪ねて

さらに特筆しなければならないのは、犬鳴村には「先輩」がいたと言うことです。それは「杉沢村」と言います。これもネットで広まり、“地図から消えた村”と称されました。どういう村かというと、

1・青森県のどこかにある。「空港の近く」「近所にゴルフ場がある」といった情報も
2・村の入り口には鳥居と猿田彦の石碑がある
3・村人は1人の人間によって殺害され全滅。よって地図から消えた

といったものでした。これも結論から言うと実際にこういった村はなく、特に3などは明らかに「津山30人殺し事件」を連想させます(横溝正史著の小説『八墓村』のモデル」。1人の青年が村人30人を殺害した戦時中の事件)。

上記1、2、3の情報を元に1999年末に「ダークサイドJAPAN」創刊時にライターさんと一緒に青森まで行き、飛び込み当然の無謀な取材を敢行しました。とは言え、青森から北海道に渡り「日本で一番小さい市」「幽霊団地」(いわゆる廃墟)「消えた街」(炭鉱町跡)などを回ったので、「杉沢村も行ければいいな」くらいのノリでした。取材費分くらいのネタは得たつもりです。

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