茨城一家殺傷 岡庭容疑者が「無罪」となる可能性は小さくない…捜査で欠けている2つの要素
まず、県警は岡庭容疑者が事件前に被害者宅周辺を撮影した動画を確保している。岡庭容疑者宅から境町の現場までの距離は約30キロ。また、被害者宅は道路からちょっと見ただけではわからない、林の中に位置している。被害者一家との面識がないとされ、運転免許証も持ってない岡庭容疑者が偶然通りがかり、撮影するような映像とは思えない。つまり件の映像は、岡庭容疑者が被害者宅を「下見」した可能性を示しているわけだ。
茨城県一家殺傷事件 岡庭容疑者は30Km以上離れている被害者宅をいかにして走破したのか 実際に走行してみた結果
次に、Wi-Fiの接続履歴だ。スマートフォンは一般的に、常に周辺から飛んでいるWi-Fiの電波を拾っている。たとえIDとパスワードを入力して接続しなくとも、スマホに内蔵されたGPSなどの位置情報の精度を上げるために、移動中にも周囲のWi-Fi電波を拾い続けているのだ。
この履歴を辿れば、持ち主がいつ、どのような経路で移動し、どのエリアにどれだけの時間滞在したかがわかるわけだ。この情報から、岡庭容疑者が事件当夜に現場周辺にいたことは確実と見られているのだ。
ただ、これらはいずれも状況証拠に過ぎない。岡庭容疑者が事件前に現場周辺を撮影したことがいかに疑わしくとも、「偶然」の可能性が排除されるわけではない。
「動機」を説明できない
また、Wi-Fiの接続履歴からわかるのは、概ねの移動経路と滞在エリアだけだ。境町での殺傷事件は被害者宅の中で発生している。Wi-Fiの接続履歴だけで、岡庭容疑者が被害者宅の内部にいたことを証明することは不可能と思われる。岡庭容疑者が被害者宅の室内に侵入したことを示す証拠がなければ、事件当夜に「偶然通りがかっただけ」である可能性は否定しきれないわけだ。