茨城一家殺傷 岡庭容疑者が「無罪」となる可能性は小さくない…捜査で欠けている2つの要素

過去にも、殺人事件の容疑者が状況証拠だけで逮捕・起訴され、有罪になった例はいくつもある。それらのケースで検察官は、被告の自供がない中でも、犯行の動機について説得力ある推理を語った。怨恨がらみによる事件ならば関係者の客観的証言が、保険金殺人であれば事件前後の被告の行動が、強い手がかりになったためだ。

一方、岡庭容疑者の場合はどうだろうか。10年前、見ず知らずの少女たちを襲った動機は、彼の「心の中の闇」にあった。その闇の中では常識とはかけ離れた思考により、暴力的な衝動が芽生えているのだ。岡庭容疑者がいつ、どのようにして小林さん一家に殺意を抱き、犯行を決意したかを、他人が推理するのに必要な客観的な根拠――これこそが、岡庭容疑者が犯人であることを説明する第2の重要な要素だ。そんなものが存在するとすれば、岡庭容疑者の頭の中だけだろう。

しかし現在、岡庭容疑者は犯行を否認しているとされる。捜査当局は彼の自供を取れないまま、有罪に持ち込むことができるのだろうか。(取材・文◎編集部)