茨城一家殺傷 岡庭容疑者が「無罪」となる可能性は小さくない…捜査で欠けている2つの要素
犯人が被害者宅の内部に侵入したことを証明するために有力な手掛かりになるのが、室内で採取された指紋や毛髪などだ。
しかし、今回の事件では、これらの証拠が発見されていない。岡庭容疑者が、自宅に硫黄45キログラムを所持したとして埼玉県警により三郷市火災予防条例違反の容疑で逮捕されたのは、2020年11月である。指紋や毛髪が採取されていたならば、境町での殺傷事件でもとっくの昔に逮捕・起訴されていたはずだ。
犯行は室内で行われたのに、岡庭容疑者が被害者宅の内部に侵入したことを証明する証拠がない――これが、岡庭容疑者が犯人であると説明する上で欠けている、第1の重要な要素だ。
このような状況にもかかわらず、県警はなぜ、逮捕に踏み切ることができたのか。週刊新潮の報道によれば、現場に残された「足跡」が捜査を進展させたという。事件当夜、被害者宅1階の脱衣所の窓は施錠されておらず、犯人はそこから侵入した可能性が高いと見られている。新潮によると、この窓のある外壁に、犯人がよじ登った際についたと思しき足跡が残されていた。そして、岡庭容疑者が事件前に購入していたとされるレインブーツと、現場の足跡、いわゆる「下足痕」が一致したのだという。
これでもまだ岡庭容疑者が被害者宅の内部に入り込んだ証明にはならないが、他人の家の外壁に足跡を残すというのは常識では考えられない行動であり、彼が犯人に違いないとの心証は限りなく高まる。
それでもまだ、犯行が岡庭容疑者によるものであることを合理的に説明するには、もうひとつの重要な要素が必要になる。動機だ。