暴走対談 平野悠(ロフトプラスワン席亭)×イノマー(ロッカー)
イノマー
「オナニーマシーン」のボーカリスト、ベーシスト。「オリコン・ウィーク The Ichiban」(「オリ★スタ」)元編集長。オリコン創始者小池聰行が2001年に逝去後、独立。ソフトオンデマンドなどでAV監督などもする。2018年7月に口腔底がん、余命三年を宣告されたのを公表。同年8月に舌の3分の2を切除。なおも活動中。
「俺たちはイノマーが淡々と語るのを「そうですか」と聞く、と。これしかないんじゃないか? 」(平野悠)
平野:「ルーフトップ」(※ロフトプロジェクト発行の月刊フリーマガジン)を見たら「死んだその日が最終回」って書いてあってびっくりしたよ。2年前、ロフト小林社長が癌との戦いで敗れて死んでしまったこともあるし、この記事はショックだったな。
イノマー:いつもこんな書くつもりはないんですけど、文章書く時はなんも考えないでバーって思いつくまま書いちゃうから、気づくと(笑)。
平野:昔のソニーの時はオナマシレコード1万枚近く売れてるんだから、やはりすごいんだよな。
スタッフ:LOFT RECORDSでは4万枚売れてます。ロフトでは一番売れたアーティスト。
平野:さて、ちゃんと正式にインタビュー始めましょうか。できれば俺は吉田豪さんみたいにインタビューの専門家になりたいんだから。ちゃんと下調べしたよ。今日は「かわいそう 」だとか、「頑張れ」とか、そんなことは言わないで! とにかくイノマーの最後インタビューかもしれないし、これひょっとしたら最後の......なんて言っちゃいけないな!
イノマー:ホントですよ、いつ死ぬかわからない(笑)。
平野:俺たちはイノマーが淡々と語るのを、「はあ、そうですか」と神様のように聞く、と。これしかないんじゃないか? と昨日からずっと迷ったんですよ 。とにかくイノマーさんのことを知らない人のためにTABLOで出します。TABLOは月間800万PV以上のアクセスがあるんですよ。まずは人定尋問から行きたいと思います。1966年生まれ。オナマシのボーカルベース担当、駒澤大学を出てるんですね。そっから即オリコン入社。その音楽誌編集の時代にイノマーさんはバンド活動やるとかは考えてはいなかった?
イノマー:何も考えてなかったですね。オリコンって会社自体もどんな会社なのかわんなかったですし。当時、アルバイト募集みたいなのが出てて普通に応募しただけ。
平野:オリコンに入社出来たのは故小池聡行社長さんの寵愛が深かったわけ?
イノマー:最終的にはそうかもしれないですね。
平野:小池さんって不思議な人だね。 イノマーってオリコンで編集長2回、副編集長3回もやってるんだろ? 降ろされたり上げたり降ろされたり...そんな人生。これも後ろで全部見てたのが小池さん?
イノマー:そうですね。先代の小池会長が面白がって全部任せてくれた。それ以外の人は全然認めてくれなかった。
平野:ボスがいいんだ。じゃあボスが死んじゃった時はショックだった?
イノマー:同時に退社しました。肩たたきにあう前に自分から。
平野:居場所がなくなってやめちゃうんだ。だってその時は愛する妻がいたわけでしょ? 生活面倒見なきゃいけないわけでしょ? (イノマー飲み物を吐く)。愛するなんて言ったらむせちゃったか。
イノマー:いやいや。でも当時結婚してたのかなぁ? いや、離婚してましたね 。1回目の。
平野:何でその女と別れたかというと「リビドーがなかった」。 思わずわたしゃリビドーって調べたね。リビドーがないとは「性的衝動がない」なんだろうけどえらい哲学言葉だよね。
イノマー:オイラがもうなかったのかも。
平野:じゃあもう若いんだから別れるしかない? セックスが命のイノマーだから。
イノマー:そうですね。まだ20代だったので。
平野:2回目は? 今度はリビドーあったの?
イノマーは歌い続ける
イノマー:2回目はしたくてしたわけじゃないんですけど。なんかもうどうでもいいやって思ってて。多分そのへんから、20代後半から、自分の人生って世の中にあてはめるものとか、サンプルとか、目指すべきものが一切なくなっちゃったんですよ。離婚なんてオイラにとっては大したことじゃないし。ノリで結婚してノリで離婚したって感じ。会社辞めたのも意味ないし、なんか全部もう自分がやることに関して意味がなくなってきましたね。
平野:1999年に会社を辞めたんだよね? それで独立して。STREET ROCK FILE。これも知ってますよ。編集長をやってた?
イノマー:そうですね。編集長というか監修というか。
「ダンボールで家を六本木のオリコン社内に作って住んでましたね」(イノマー)
平野:そして2003年にソニーエンターテイメントからデビューすんだよな。
イノマー:歌詞も、ライブのやり方も。全て一切変えないって約束でデビューしました。
平野:そのバンドを口説いたプロデューサーって誰なのかな?
イノマー:ソニーの今、すっごく偉い人。名前言えないッスけど(笑)。
平野:メジャーのソニーエンターテイメントから出すこと自体も凄い。
イノマー:一切お金の話はしてないです。契約金はいくらとか。歌詞がどうとか、そういう話しかしてないですね。
平野:で、当然そんなのは全部発売禁止と、違う?
イノマー:発禁は一枚だけ。あえてそういう作品に。バンドやってるなら発売禁止って勲章が欲しいじゃないッスか? でも、チンポやオナニーじゃ発禁にならないんですよ。政治とか社会ネタじゃないと。あとはスポンサーの悪口とか。オナマシは敢えての政治ネタで発売禁止に(笑)。
平野:でも、当時は売れたんだよね?
スタッフ:ソニー行く前にまずLOFT RECORDSで売れましたね、4万枚。
イノマー:ファーストは4万枚で、ファーストとセカンド合わせると7万枚。 『恋のABC』と『彼女ボシュー』で1年間で7万枚売れたんですよ。でもそれがピークですよ、数字的には。7万枚っていう売上を引っ提げてメジャーへと行ったらいきなり半分以下(笑)。
平野:いろんなところを追い出されてる、と。オリコンを追い出された理由が3つぐらいあって、「江頭2:50を全裸で掲載した」。
イノマー:ありましたね。
平野:「社内ホームレス」。社内でずっと住み込んでたんでしょ?
イノマー:ダンボールで家を六本木のオリコン社内に作って。そこに住んでましたね。白亜の外観にそぐわない(笑)。
平野:三つ目は「全裸でバイク便を受け取りに行った」そういう事件で社内から顰蹙を買う。
イノマー:ボコボコにされて出て行った。でも、ボコボコにされたかったんだと思いますよ。当時は。わざと大人を怒らせていたというか。
この盛り上がりを見よ
平野:で、2回目の結婚をして、妻に男ができたと。リビドーがなかった。どっちがリビドーなかったか、もうよくわかんねえや(笑)。
イノマー:オイラがオリコンで社内ホームレスしている間に、奥さんがバリの男性と結婚しちゃってたんですよ。アハハハハ! だからしょうがないから別れた。
全裸になる理由「なっちゃいけないっていうのがいや」(イノマー)
平野:あんたの曲や書き物でめちゃくちゃいいフレーズがいっぱいあるんだよ。昨日2、3時間ぐらいかけてオナマシ聞きながらネットで色々読んだんだよ。あんたは交友関係がめちゃくちゃ広いよね。俺の大好きな銀杏BOYZの峯田なんか親友の一人でしょ? 峯田の「とりあえず戦争反対って言っとけばいいんだろ」。俺なんかドキッとするわけ。そこにイノマーがいるんだよな。そこから神聖かまってちゃんとかミドリとか。そこいらが好きになっていったな。イノマーの曲、「ソーシキ」がすごくいい! 大ヒットするはず。
スタッフ:前のCDですかね...?
平野:3、4曲聞くと同じように聴こえてきてちょっと辛い部分があるかなってのがあったけども、でも押せ押せのサウンドはやっぱ凄い! あれいい音で聞いたら凄いだろうなって思うぐらい重厚な音をしっかりやってるって感じがする 。オノチンのギターも鋭い、バスドラもいい。あと一発のアイデアが欲しかったかな。ここまで重たいの感じの、ヘビメタみたいな感じ。ヘビメタ 、ハードロックみたいな感じに聞こえてた。
イノマー:世代とか年齢ですかね。うちのメンバーも、古いロックとかパンクとかばっか聴いてますからね。サウンドはギターのオノチンとドラムのガンガ ンっていうメンバーがしっかりしてるからだと思いますね。
平野:しっかりしてるよね。いいバンドだよ。
イノマー:照れますね。
平野:パンク系ミュージシャンってみんな酔っ払って全裸になったりするじゃない。イノマーもすぐ全裸になる。峯田もそう。
イノマー:オイラの場合は...そうですね。
平野:場合はじゃねえよ!(笑) 全裸になる気持ちってのはあんまりよくわからないんだけど、どう?
イノマー:全く意味がないんですよね。申し訳ないんですけど。裸になることに関しても。たかがチンポっていうか(笑)。だから、全裸になりたい訳ではないんですけど、"なっちゃいけない"っていうのがヤ なだけで。別にいいじゃん、って。 (※筆談『「なっちゃいけない」っていうのがいや』) なっちゃいけないっていうのがあるから、それがムカつくから裸になるっていうか。
平野:いい話ですね。
イノマー:いい話かどうかはわからないッスけど(笑)。
平野:世間的にやっちゃいけない事をやる快感。快感でいいんですか?
イノマー:快感というか、照れ隠しに近いと思いますけどね。
平野:俺の永遠の心情は反権力側に立つのは素敵だってのと同じでさ、なんか近いよ。それと同じだよな? パンクバンドは基本的にそうか。戦争反対はとりあえず言っとけばいいんだよ。どうでもいいけどさってこと、社会を俯瞰でポーンと見るような感じだね。
イノマー:全てに関してそうです。すべてに関して俯瞰で見てますね。だから、他人にはまったく期待していないですし。
「オイラはどんな辛いこともすべて受け流して来たんで」(イノマー)
平野:歴史に残るだろう渋谷 La.mama(ラ・ママ)でのライブの話にいこう。
スタッフ:多分昨年の8月ですね。医者から止められてるんだけど、舌を切る前に最後のライブをやろうと言うことで。
平野:ラ・ママの伝説のライブってのは8月のことなんだ! 朝の6時から100人以上並んで60万円以上の寄付が集まった。伝説のライブをなんでうちでやらなかったんだって怒ったんだよ! つい最近だけど(笑)。医者から手術をしたら「助かる可能性がある」けど、「間違いなく歌えるようにはならない」と言われた。
イノマー:それはもう絶対に歌えない。でも手術しないと死んじゃうわけで、手術は舌を切るのは確実。受け入れるしかない。でも、もしかしたら、もしかしたら歌えるかもしれないなって。
オイラの中でどうにかなるんじゃないの? っていう曖昧で不完全な自信がそこでもあって。だからやってみないとわからないかなって。だけど、担当医師の話を受け入れたわけではないんですよ。
オイラの人生って、受け入れたわけではなくて、ずっと全て受け流して来た人生っていうか。20代後半からそうですね。離婚もそうだし、会社ヤメて無職のフリーになった時もそうだし。アル中とか病気とか癌もそう。オイラはずっとどんなことも、どんな辛いこともすべて受け流して来たんで。
オイラの人生論は「全て受け流す」。だから「癌です」 って言われたときも受け入れたわけじゃなくて、受け流したし。舌切りますよ って言われたのも受け流した。流れていけばどうにかなるんですよ。流れていかないと腐っちゃう。川の水もそうだし。水も流れていけば腐らないんですよ。ドブにならない。だから受け流して。
平野:真正面から受け入れちゃうとしんどくなって辛くなる。
イノマー:無理です。死ぬしかないから(笑)。
平野:何を言われても俺は俺だっていう感覚で生きる。
イノマー:そうですね。どんな強風も吹かれながらそれを楽しんで。笹の葉というかススキのように受け流す人生ですね。
20周年記念アルバム「オナニーグラフティ」
「今日のインタビューが最後とは思っていないから」(平野)
平野:その苦闘の中で絶対に生還してやるぜっていう意志と気力はある?
イノマー:もちろん。だから受け流した先には生きるっていうこと、歌うっていうことが待ってるんじゃないか? って思い、希望がある。
平野:ラ・ママのライブは1時間半もやってしまって予定オーバーしたらしいけど、終わった時の感覚ってやりきったと言う充実感?
イノマー:あんとき何だろうな......普通でしたね(笑)。あ、でも舌があってちゃんと歌えるライブはこれが最後でこれからは違うやり方、新しいことをやっていくんだなぁって思ったぐらいで。
平野:いいぞいいぞ、舌がなくても歌うぜという一心不乱の姿勢。僕はラ・ママのライブで客が250人集まって募金も63万集まって、あんたを見たいっていう客が列を作ってたというのがすごい衝撃で。そこで多くの観客はこれが最後だからとか、せっかくだからとか、そういう感じで見てるのがすごく嫌ってるという感じをイノマーの書き込みの中から受けたんですけども。最後だからって言われたら冗談じゃないよなと言う気持ちがあった。
イノマー:そうですね。
平野:俺だって今日のインタビューが最後だとは思ってないからね。これでイノマーの音楽を聴くのは最後だからとか思って会場に来られたら辛いよな。
イノマー:でもそれも受け流す精神だからそういう人もいるし、そうじゃない人もいるってとこはありますね。ただ、哀れに思われたくないってのはあります。それだけが一番嫌だから。その為にオイラはもっと強くならなきゃいけないんだなっていうのはあります。
平野:ラ・ママのライブが終わった後の充実感っていうのは、俺は終わっていない、生きてるぞとか、冗談じゃないぞ死んでたまるかって感覚になりました?
イノマー:次の日がソフトオンデマンドでAVの撮影だったんで死ねないな、っ て(笑)。
(※筆談『SOD AVのさつえい』)
あ、女子社員ものだ! これがあったからそのことをずっと考えてた。あんまり感慨深いというのはなかった。でも、楽しかったですよ、楽しかったほんとその日のライブは。やって良かったと思うし、すごい良いライブができたと思いますよ 。
「めんどくさいですよ、こんな身体」(イノマー)
平野:病棟生活の話に入るんですけども、基本的にイノマーは明るく楽しく前向きにが基本と書いている。まあこれは誰でもいう話しだよな。
イノマー:まだ舌を切ってからライブをしたことがないのでそれはどうなるかさっぱりわからないッスけど。
平野:大阪ファンダンゴは10日だっけ?
イノマー:自分でもまったくどうなるかわかんない。
平野:ガガガSPとやるんでしょ?
イノマー:そうですね、大阪はガガガで。新宿は峯田くんとハルさん。
平野:東京は銀杏BOYZじゃなくて峯田が出てきて一緒に演奏するってこと?
イノマー:一応アコースティックで。
平野:イノマーが書いている。「そうか。これから長い壮絶な戦いなのだ。めんどくさいことになった。」これを言えるのはすごいな。癌と戦うのはめんどくさいって。
イノマー:いや、ぶっちゃけめんどくさいですよ。こんな体(笑)。ヤんなっちゃいますもん。大人しくリハビリに専念するわけにもいかないし。何もやらないでじっとしてらんないですもん。
平野:そらそうだよ。全国で癌と闘っている人も見ているし。
イノマー:でも、イノマーやるからにはしょうがないのかなと思って。だから死ぬまでイノマーやっていくしかないから。なんでもいいですよって。なんでもやりますんで、って。でも痛いのはやだ。
(※筆談『痛いのはやだ。』)
イノマー自筆
平野:ははは! これいいですね。
イノマー:だって舌を切って、お腹の肉を切って舌にしたんですよ。お医者さん10人で10時間の手術。
(※筆談『10人 10時間』)
ソフトオンデマンドのAVタイトルみたい(笑)。いや、だけど、こんなの地獄ですよ。
平野:でもあんた麻酔で寝てんだろ?
イノマー:そうそうそう! 一同:笑
平野:それは麻酔が覚めて起きてから地獄って感じになるわけ?
イノマー:起きてからのICU! 10日間!
(※筆談『ICU→10日』)
これはもうここはひどい! 最低! ここは味わった人じゃないとわからないと思う。人間墓場。二度と行きたくない。
平野:手術する医者連中どんな感じなの。
イノマー:ようは実験室ですよ。
(※筆談『実験室』)
イノマー:人体実験室。ほんとそうですよ。多分人死んでますよ、わかんないだけで。人、死んでる。そういうとこ。恐ろしいよ、わかんないもん人死んだ ってあそこ。それしんどかったですね。
「あーーーー、面倒くせーな」(イノマー)
平野:俺はもうとうに70歳過ぎてるんですよ、いつ死んでもおかしくないってと日々感じている。確かに自分の人生もイノマーと同じでろくな生活してない。好奇心であらゆることをやってきて、いつ死んでもおかしくないと思ってたここまで来たけど、今、俺ももう生きてるのが半分ぐらいめんどくさいもん。俺はね、今までずっと死ぬのが怖くて、死ぬってことばっかり考えて夜も眠れないってことが多々あった。子どもの頃から。死んだらどうなるか、死んでも永遠とかさ。でも70過ぎるとね、そんなこと風まかせでどうでもよくなる。
イノマー:そうですね。オイラも死ぬことが怖いってゆうのは確かにないですね。もったいない、っていうのはありますけど。でもまだまだ。
平野:そうだよ! 50代ってのは一番働き盛りだし、一番仕事が面白い時期なんだよ。50代ってのは俺も一番働いた覚えあるから。プラスワン作ったのが51の時。ちょうど外国から帰ってきて。
イノマー:今こうやってロフトさんと一緒に仕事できるのすごい幸せです。有難い。
平野:イノマーさん、こんなになってもまだチンポとかオナニーだと歌って大したもんだ。
イノマー:でもそれも受け流すというかね。癌もバンドもオナニーも 。オイラのやるべきことなのかと思うから。これからもずっとチンポだオナニーだって言い続けたいし、裸になって。そこに意味はないってゆうか。なんでかと聞かれてもわかんないし。自分でもわかんない。選んだ意味もよくわかんない。下ネタが好きなわけでもないし、それは難しいんですよ。 (※筆談『下ネタが好き 裸になりたい × 好きなわけじゃない。』)
平野:難しい?
イノマー:そういうのでもないんだよなぁ。違うんですよ。なんなんだろ、自分でもよくわかんない。そんな好きなわけじゃないんですよ。
平野:またイノマーがわけわかんなくなった(笑)。さっきの"ちゃらかす"という意味でね。俺をいじくってくれよって感じで、俺もお前らをこうやっていじくるぜって話。でもだから、俺たちから見ればイノマーがそれでもまだやってるってのはどっかでリスペクトする意味もあるんですよ。だってこういうバンドあっていいわけだから。あったらいけないバンドとは全く思わない。裸になってチンポ出して、オナニーだなんだゆうのもこれはアリだよな!
イノマー:20年ですからね。
平野:20年!(笑)
イノマー:1、2年じゃない。20年でメンバーチェンジなしってのが凄いですよね。頭おかしい。20年ふざけてらんないですもん、普通。20年ふざけてたら大概は本物になって病院送りですもん。
平野:この20年間、性春バンドとして悪ふざけを長いこと応援してくれたみんなに感謝。
最後の質問。 「今回の十三ファンダンゴ、新宿ロフトでは泡を吹きながらヨダレを垂らしマイクを口に放り込みアウアウアと叫ぶ! 舌を切ったボーカルを想像してくれ」 と、あなたはメッセージ出してるんですよ。
イノマー:オイラがどこまでできるかってのは......。
平野:だけどあんたは幸せだよ。ここまできてさ、みんなが高いチケット買ってあんたの音楽を体感しようとしている。
イノマー:そうそう。
平野:舌のまわんねえ奴を金出してなんで俺は見なきゃいけないんだって。
イノマー:本当にそう思うんですよ(一同:笑)。だからみんな来なくていい。 本当、申し訳ないと思う。やることはやるけど限界があるから。どこまでお客さんに対して満足いくものをステージから届けられるかやってみないとわからない。
平野:そうだよ! まぁ今回ね、あんたが言ってる「15分から20分が限界だろう」と。でもやるんだろうな、1時間以上。俺、15日は絶対行きますから。あんたを見たい!
イノマー:あーーーー、面倒くせーな(笑)。
平野:ははは。まぁでも人様にお金を取ってんだからめんどくさいって言っちゃダメでしょ。
イノマー:しょうがないですよね(笑)。
平野:でもね、感謝だよな。
イノマー:感謝ですよ! ありがたいです。
平野:パンクとしてのオナマシのメッセージ。何点か拾い上げてみたんですけども、 「モテない悲哀。人生を恨むのではなく、それはポジティブに楽しむ内容」これはどういう? これはモテない人の悲哀を非モテ同盟みたいなもんだよな。こういうこと書いてるんだよ? これはモテないことを楽しめって意味ですか?
イノマー:オナニーマシーンの活動の根底にあるのは学校でモテないイケてない童貞、男子生徒の心の叫びですから。「ヤリてーーー」っていう。でも、いざ、実際にそういうシチュエーションになるのが何より恐い臆病者。セックスが恐いからオナニーに逃げるっていう。
平野:「10年前に作ったソーシキはまさに今日のための歌である」 「ソーシキ」はすごい内容、すごい話だなって。これ今書いたのかと思ったら10年前に書いてるっていうのがちょっと面白かった。
イノマー:10年以上も前の話ですからね(笑)。なんだろな......でも、それも ラブソングで......。これって一応、クリスマスソングなんですよ。
平野:「ソーシキ」がクリスマスソングなの?
イノマー:天国か地獄かわかんないけど、クリスマスの夜に雪が見たいって言 ってた女のコのために、あの世でオナニーをして、白いザーメンをクリスマス に降らせるっていう。ロマンスの神様的な。アルペン?(筆談『天国 地獄 あの世でオナニーをして白いザーメンを Xmas 降らせる 』)
そういうラブソングだったんです、オイラとしては。
平野:ここまで過激なイノマーさんのバンドなんだけども、俺たちがパンク全盛期の時に見た遠藤ミチロウみたいにステージで女性客にフェラチオさせるとか、ブタの臓物ばらまくとか、自殺未遂するとか、そんなことやる気はないのかもしれないけど。
イノマー:それは、どうしてもお客さんとの距離感かもしれないですね。
平野:距離感か。あの時はね、お客が熱中、もう興奮しちゃって目こんななってステージにしがみつくそういう時代だったよね。パンクの走りだよね。ハードコアじゃなくて、パンクの走り。イノマーさんはそれやんないなって。今そういうことやれるバンドはないか。「I♡オナニー、オナニーが好きなんです」ってのもさっき言ったみたいに受け流しというかお客さんと距離を置くための言葉。
イノマー:そういうのあるのかもしれないですね。無意識かもしれない。
平野:まあ、あんたのやってるのはほとんど放送禁止確実。
イノマー:そこも意識してないんですよね。
平野:意識してない? どうっすか、ロフトレコード幹部。
スタッフ:武道館でフライヤーが配れなかった。
イノマー:不可抗力です。でもオナニーマシーンなんてバンドをやってると、いろんなことがありますどうしても。でもそれもいちいち怒ってたらキリがない のでやっぱ全部受け流す。
「受け流す術はオリコンから学んだ、感謝しています」(イノマー)
イノマー:これはすごいカッコ悪い話かもしれないけど、でかいと思う 。会社員をやった実績(笑)。編集長って色々あるじゃないですか? 特にオリコンなんて「Thats芸能界」なんで。その中でやっていいこと、悪いことってすごいあるわけで。自分の哲学とか捨て去って、受け流していかないと雑誌なんか作れないんですよね。だから、オリコンでオイラは学んだと思いますね。社長に教えてもらったし、オリコンには感謝してる。
平野:オナマシの親友バンド、銀杏BOYZ、ガガガSP、サンボとかどこで出会ったの? 峯田とは?
イノマー:20年前。ライブハウスとか雑誌とか。ライターで文章書いてたんでそういうのもでかい。
平野:そこいらの時代で培った人間関係なんだ。この20年、ずっとどっかでオナマシを支えてくれてるという話もあるよね。ほんとはね、オリコンで勤めて カミさんを大事にしてればこんな風にはならなかったのに。でも病気とは別だよな。
イノマー:でも自分がその都度、その都度、決めてきたことだからそれはしょうがないし。あんまりそれに対してあの時ああすればよかったなってのは一切思わない。例えばこんな姿になっちゃったのも原因のひとつに過度のタバコ酒だったりするわけだけど、それでもやってきたことだからしょうがないし、後悔はしてない。
平野:池田晶子(哲学者。故人)で好きな言葉があって「命は尊いものだというけど、バカ言っちゃいけない。命は尊くも卑しくもありません。単なる自然現象です」。俺この言葉ですごい救われてるですよ。くよくよ考えたってしょうがない。自分から望んで病気になったわけでもなんでもなくてさ、生きてればそういうことがあって。これは自然の原理。これは逆らいようがないってゆう風に俺はどっかで考えちゃうんですよね。これからがあんたがちゃんと生きるのも自然の原理。完全復活するのも 、自然の原理でいけるのかいけないのかって話になってくるような気がするんですよね。
イノマー:オイラのこの状態を今の人たちはどういう風に思うか、受け止めてくれるかわかんないですし、これから何をしたら正解なのかもわかんない。だからもうやるしかない。歌、ステージもそうだしいろんなことを。もうダメだって引きこもったらそれでおしまいだし。
平野:俺だったらめんどくさいから心折れちゃうね。だって胃に穴開けられてそこから飯食ってたんでしょ? 胃ろうですよ。俺だったら頼むから殺してくれって、めんどくさくて。胃ろうを超えちゃったんだよな?
イノマー:超えちゃいましたね。鼻でゴハン食べてました(笑)。
平野:すごいよね。鼻に何日ぐらい管突っ込まれてたの?
イノマー:10日ぐらいかな。ずっと邪魔でしょうがなかった。それで新しいアルバム『オナニー・グラフィティ』のプロモーション行ったもんね?
平野:最後に。病気、癌も含めて人を裁くもんではないと。これは自然現象だと。
イノマー:そうそう、ウンコやションベンと変わんないですよ。
平野:いろんな人が「辛いね」とか、「頑張ろう」とか言うのも受け流していくしかないんだろうね。なんでお前に辛いねなんて言われたくねーよ思っちゃたりしない?(笑)
イノマー:そこまでひねくれてないッスよ(笑)。
平野:新宿ロフトの公演が終わって次のテーマは?
イノマー:次は...。
平野:結婚?
イノマー:ふふふ。あ~、でも、今年は「ティッシュタイム」って20年やってきたオナマシのイベント集大成FESを計画中ではあるかな。
平野:それまでは死ねわけにいかないな。決めたんだったら。みんな迷惑かかるからな。生き抜いてくれないと困るからね。
イノマー:そうですね。
平野:石丸元章に一声かけてくださいよ。
イノマー:お体に気をつけて。健康第一。
一同:笑
☆オナニーマシーン20周年記念アルバム
「オナニー・グラフィティ」
2018年12月5日Release
LOCA-1031
LOFT RECORDS
2500円(+tax)
iTunes Storeなど各種音楽配信サイトにて配信中!
【ライブ情報】
4月24日(水)新宿LOFT
SHINJUKU LOFT KABUKI-CHO 20TH ANNIVERSARY
loft day
STANCE PUNKS / オナニーマシーン / イギリス人 / イシザキアキユキ(夜這いサスペクツ / The Cavemans)
PULLING TEETH / 他
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV ¥3,000 / DOOR ¥3,500 (+DRINK)