「万引きする気満々でしょ」 プロが分析する樋田容疑者の道の駅店内での異常行動

2018年10月02日 女性万引きGメン 樋田容疑者 異常行動 逃走 道の駅

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樋田容疑者ポスター[2].png
 大阪府警富田林署から逃走していた樋田淳也容疑者(30)が、山口県内の道の駅で食料品を万引きしたとして、店内を警戒中の女性保安員に現行犯逮捕されました。

 いわゆる万引きGメンが、道の駅にまで派遣されていることに驚いた方も多いと思われますが、比較的高額な商品が陳列されているために被害は散発しており、我々からすれば珍しい現場ではありません。

 来店者の多い休日や、ツアーバスの立ち寄りが多い日など、多数の来客が見込まれるときに仕込まれるのです。この日は、二人の女性保安員が店内の警戒にあたっていたというので、おそらくは新人研修が実施されていたか、目に見える被害が頻発していたのでしょう。

 樋田容疑者が逮捕されたのは18時過ぎのことで、営業時間から察すれば、業務終了間際の捕捉だったに違いありません。逮捕手続きには、少なくとも6時間以上かかるので、帰宅が許されるのは、どんなに早くても日付が変わってからのこと。残業を覚悟したうえで捕捉に挑んだおふたりの使命感に、同業者として頭の下がる思いがしました。

 きっと生涯忘れられないであろう本件は、おふたりにとって大きな誇りになることでしょう。余計なことではありますが、府警OBによる200万円の褒賞金を受け取られる際にも、おふたり仲良く受け取っていただきたいと思います。

 逮捕の前日に、今回の逮捕現場とは違う道の駅で、樋田容疑者が万引き行為に及んでいる防犯カメラの映像を検証してみました。

 樋田容疑者が入店する様子を見れば、都内で見かける若年ホームレスと同じような雰囲気で、この場にいたら絶対に目を離せないというレベルの不審者にみえます。入店直後に店内を見通す目配りも異様で、この時点で早くも「やる気」を感じました。

 楽しげな様子でレジ店員に話しかけている場面がありましたが、これも万引き常習者に見られる代表的な挙動のひとつといえます。店員に話しかけることで油断させて、その隙をみて盗んだり、自分が疑われてないか探るのです。逃走犯である樋田容疑者の立場を考えれば、相手の様子を探りたくなるのは当然のことで、わざわざ店員に話しかけてしまう気持ちもわかるような気がしました。

 レジ前に陳列されたタコめし(450円)に手にする際にも、弁当をみるふりをして聞き耳を立て、後方にいるレジ店員の様子を窺っているのがわかります。レジ店員が袋詰めを始めると同時に、自分の背中を幕にして極力手を動かさない動きで商品を取り、それをみられないように腹の前に商品を抱えて歩く。

 この一連の動作をみただけでも充分に怪しく、レジから目を離さずに死角となる棚の陰に向かう樋田容疑者の姿は、盗みたいという気持ちに溢れた状態といえるでしょう。近くに客がいるにもかかわらず実行していることから、犯行に対する根拠のない自信も垣間見え、意外と大胆な性格の持ち主であると思えました。隠した商品が落ちないように、膨れた腹を押さえながら歩く姿に至っては不自然極まりなく、勇気さえあれば誤認を恐れることなく声をかけられる状況です。

 この時に盗んでいたのは、タコメシやカツサンド、てんぷら、餅など5点(合計1,800円相当)で、腹にたまりそうな食べ物ばかりを狙っているところをみれば、空腹に耐えかねての犯行といえるでしょう。カツサンドや餅は、移動中に食べるつもりだったのかもしれませんね。ツーリストを装い、道の駅で万引きを繰り返して食いつなぎ、逃走を続ける。ひったくりより、万引きだ。そんな考えに至っていたのではないかと推察しています。

 逮捕時には暴れて、財布を取りに出ただけだ、トイレに行かせろ、なにもしてないのに触る権利があるのかなどと、最後まで歯向かったと聞きました。これは逃走や証拠隠滅の機会をうかがう被疑者の常とう句で、我々保安員が要求に応じることはありません。

 事務所に連行されてからも、駄々をこねる子供のように床に寝ころび、名乗ることもなく犯行を否認し続けたそうです。このように往生際の悪い被疑者は、そのほとんどが再犯者や執行猶予中の者。留置場から逃走するほどなので当然ですが、なんとしても刑務所には行きたくないのでしょう。泣き落としてでも、警察だけは呼ばれたくない。そんな樋田容疑者の身勝手な気持ちが伝わってきます。スーパーなどで万引きしたホームレスを捕まえた場合、彼らの発するニオイを嫌がり、関わるのが面倒で追い返してしまう店長もいますが、こうした結末があるから万引きは侮れないと注意を促したい気持ちになりました。

 犯罪を繰り返しながらも、みごとなまでにツーリストに成りきり、屈託なく店の人達と交流していた樋田容疑者は、役者型の犯罪者といえるでしょう。その心境は計り知れませんが、日本一周を目指す体でいるウソの自分に酔って、やさしく接してくれるみんなが自分の逃走を応援してくれているような気になっていたのかもしれません。

 逃走中にみせた大胆な行動は、稀代の殺人鬼として名を馳せた西口彰を彷彿させ、樋田容疑者も犯罪史上に名を残す結果となりました。逮捕後、樋田容疑者は黙秘を貫いているといいます。徐々に全容は明らかにされていくでしょうが、逃走中の樋田容疑者が、どれだけのモノを万引きしていたのか。そこだけは知りたいと思います。(文・伊東ゆう 現役万引きGメン)

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