東京の北東部に位置する葛飾区の小菅。駅のホームから見える、翼を大きく広げた翼竜のような形をした巨大建築物が「東京拘置所」です。
連合赤軍の坂口弘、秋葉原通り魔事件の加藤智大、婚活連続殺人事件の木嶋佳苗ら他、3000人を超える受刑者が収監されています。
2018年7月6日、日本中の注目がこの東京拘置所に集まりました。オウム真理教の教祖麻原彰晃こと松本智津夫の死刑が執行されたのです。
具体的な位置は非公開となってはいますが、この建物の地下にある刑場で麻原は絞首刑に処されたようです。
そんな東京拘置所が、年に一度だけ一般に開放される日があります。「矯正展」と言われるその日、実際に受刑者たちのいる区域へは入ることができませんが、普段は立ち入れない場所に入ることができます。
収容されている受刑者たちの起こした事件を念頭に行くと、どうにも物々しいイメージになるのですが到着して驚くのは、その牧歌的な雰囲気。家族連れが近所のお祭りのように、楽しそうに行きかい、出店での買い物に声を弾ませています。
去年訪れた私は、それでも「後ろにそびえる収容棟には、麻原や加藤らがいる」ということを感じながら過ごすため、他では味わえない気分になってくるのです。
特殊なくもりガラスになっており、受刑者から下の様子は見えず、空しか見えない作りになっているといいますが、この幸せそうで賑やかな声は、彼らにどう聞こえているのでしょう。
矯正展の定番であり目玉の一つでもあるのが、刑務作業で作られた物の販売。家具や日用品をはじめ、さまざまなものが廉価で売られています。人件費が極めて低く抑えられるために実現できる安さではあるものの、受刑者がつくったという「いわく」がついているのも価格が下げられる一因でしょう。
ここで私は、なんともモヤっとするものを見つけました。
この品だけ「理由あり処分」の赤札が貼られていますが、そもそもここにあるものすべてが、ある意味「理由あり」なのではないかと思うのです。
出店が並び、地元のブラスバンドが演奏を披露したりと、どこも賑わう矯正展の中で、ひときわ人気があり行列ができるものがあり、私もその列に並んで購入しました。
プリズンカレーとブリズン弁当(生姜焼き)。こちらは、拘置所内で受刑者に出されているものと同じレシピでつくられたもの。「クサイ飯」と揶揄されますが、まったく臭くなくうまい。白米と麦が7:3になっていてカレーにご飯がとてもあうのです。
拘置所グルメはこればかりではありません。
「網走監獄和牛メンチ」は受刑者が食べているものではありません。網走刑務所には「牛の飼育」という北海道らしい刑務作業があり、このメンチカツは受刑者に育てられた牛の肉を使ったもの。なんとA5ランクに認定された黒毛和牛で、肉の味の濃さも肉汁の旨味も抜群。都心のレストランで食べれば1000円はくだらない美味しさです。
拘置所グルメで腹を満たし、広い敷地内を散策します。ステージではゆるキャラたちが愛らしい声を上げていますが、ここが拘置所だということを思うと、やはり変な感覚になってきます。
新しい収容棟は、その巨大さもあってものすごい存在感ですが、施設内には旧舎も残されていて、歴史を感じるとても素晴らしいデザインを誇ります。
その他、受刑者たちが製作した作品の展示が行われているゾーンがあります。「これを書いたのは受刑者だ」とはっきり意識して観賞すると、作品の後ろに様々な物語が想像できて、歴史的な書聖と呼ばれる偉人たちの名品を観るのとまた別の味がにじみ出てきます。
拘置所を出たところには、この周辺でしか見られない店もあり、一般の私たちでも商品を購入することができます。オウム真理教やアレフの信者たちも、ここで購入したものを教祖へ差し入れたのでしょうか。
今年の矯正展は今週末9月29日に開催。麻原はいなくなりましたが、見どころの多い矯正展。
さらに今年は、再ブレイクを果たしたDA PUMPもやってきます。秋のお出かけに「監獄」はいかがでしょう。(Mr.tsubaking連載 『どうした!?ウォーカー』 第18回)
■東京拘置所
東京都葛飾区小菅1丁目35−1
■矯正展
2018年9月29日(土)
9:30〜15:00
入場無料
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