放火罪で逮捕された息子が語る呆れた言い訳に思わず裁判傍聴席で泣き出す母親

2019年03月04日 放火 母親 裁判傍聴 言い訳 鈴木孔明

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kaji.jpg写真はイメージです

 小林祐介(仮名、裁判当時29歳)の母親は証人として出廷するために広島から上京してきました。彼女は息子の長所を「人懐っこくてやさしいところ」、短所を「楽な方へ逃げていくこと」と話していました。息子が起こした事件について「悪いことだとわかっていても逃げたらなんとかなるだろうと甘い考えをしてたと思う」とその原因を分析していました。

 彼は地元広島の高校を卒業し、そのまま広島の土木会社に就職したもののすぐ辞めてしまいました。職場で怒られるのがイヤで逃げたようです。その後も様々な職業に就きましたがどこも長続きしませんでした。

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「それじゃあいけないよ」
 母親は何度か生活態度について注意をしましたが結局何も改まりませんでした。
 彼も現状を変えなくてはいけないと思っていました。地元の人間関係にも嫌気がさしていました。彼は10月13日、母親にも他の誰にも告げず黙って家を出ていきました。
「東京に行けば自分は変われるはず」
 あらかじめ寮付きの土木会社への就職は決めてありました。生活環境を変えても自分自身が変わらなければ何も変わらないということに、この時点で彼は気づいていませんでした。


 東京で働きはじめて2ヶ月が経った12月11日、彼は勤め先の寮を飛び出しました。
「もっと働けとか、仕事ができないとか、小言やイヤなことを言われて逃げてしまいました」
 この時の所持金はわずか数百円でした。知り合いも一人もいない東京で、後先を何も考えずまた逃げた彼に行く先はありませんでした。

 パチンコ屋の休憩スペースで閉店まで時間を潰し、途方に暮れて深夜の町を歩いていた彼は偶然、人の住んでいる気配のない古いアパートを見つけました。ためしに中に入ってみると、幸運なことに部屋のカギはかかっていませんでした。
「入ったらダメなのはわかっていましたが、寒くて我慢ができませんでした」
 彼はこのアパートで一夜を過ごしました。

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 いくら雨風がしのげても、年末のことです。電気も通っていない無人アパートには暖房も何もありません。その寒さは耐え難いものでした。
 アパートに侵入した翌々日、彼は外出して板切れや段ボールを拾ってきました。寒さをしのぐために室内に暖炉を作ろうと思い立ったのです。まず部屋に板切れを敷き、その周りをやはり板で囲いました。そしてその板でできたお手製暖炉の中に段ボールをちぎったものを入れ火をつけました。

「夢中だったので、まさか板まで燃えるとは思わなかったです」

 証言台で彼がこう言った時、傍聴席にいた母親は堪えきれず声をあげて泣き出してしまいました。広島から出てきて息子のこんな情けない話を聞かされるお母さんの気持ちを考えると、とてもやりきれません。さらに親不孝な発言は続きます。
「一回火をつけると自然には消えないということがわかっていませんでした」
 板で暖炉を作成するような人間が消火のことまで考えているはずがありません。当然、消火用の水など用意していませんでした。
「燃え拡がらないようにはしてました」
 と話していましたが具体的に何か工夫をしていたわけでもありません。

――燃え拡がらないようにって...何もしてないですよね? それ、ただのあなたの願望ですよね?
 と検察官に言われると口ごもってしまいました。
 煙がたくさん出てきて怖くなった彼は部屋から逃げ出しました。その後は119番通報もせず現場の近くでアパートを見守っていました。
「近所の人が集まってくるだろうから誰かが通報するはず」
 と甘い考えをしていたのです。幸い火はボヤ程度で済みましたが、彼は非現住建造物等放火罪で逮捕されました。

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 今後、彼は広島の実家に帰るようです。事件の起きたアパートは取り壊されることになりました。これからは宅配ドライバーの仕事をしたい、と言っていました。甘い考え方と逃げ癖のあるドライバー、イヤな予感しかしません。彼が変わってくれることを望むばかりです。(取材・文◎鈴木孔明)

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