職場の同僚女性を好きになった男 自宅を見張り生理用品さえ持ち帰ったというストーカー裁判を傍聴

2019年04月04日 ゴミを持ち帰り ストーカー裁判 張り込み 裁判傍聴 鈴木孔明

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Stoker.jpgこんな風に見張られているとしたら...(写真はイメージです)


 ストーカー規制法で逮捕されたことで金森晴哉(仮名、裁判当時51歳、婚姻歴なし)は、大学卒業後30年も勤めた会社を退職せざるを得なくなりました。前科前歴もなく、まっとうな社会人として生活していた彼でしたが、1人の女性との出会いが彼の人生を大きく変えました。

 被害に遭った女性は事件当時32歳、彼と同じ職場に勤めていました。二人が初めて出会ったのは平成23年、東京にある本社の同じ部署に配属されたことで知り合いましたが、彼はこの時の彼女の印象はよく覚えていないそうです。平成27年に彼は名古屋に転勤になり、二人は顔を合わせることもなくなりました。

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 二人が再び出会うのは平成30年、彼は名古屋から東京の本社に配置転換され再び彼女と同じ部署に配属されることになったのです。
 東京へ戻ってきた彼がまた数年ぶりに彼女に会った時、以前とは全く違う印象を受けました。彼の供述によれば、

「昔、好きで交際していた女性の面影を感じました」

 ということでした。その日から彼女への想いは日に日に強くなっていきました。


スリルを味わってみたい


 東京に戻ってきた彼でしたが、これは一時的なもので半年後には再び別の支社に異動することが予め決まっていました。支社は都内でしたが、異動となれば被害女性と毎日顔を合わせることができなくなります。

 当時の彼の様子を彼の親族は「普段はおとなしいのに、声を荒げて怒鳴ったりすることがありました。精神的に不安定になってるのは感じてました」と証言しています。

 彼の仕事は休日や夜間にも会社から呼び出され、行かなくてはいけない性質のものでした。離れて暮らす母親との確執もあったようです。彼も「今までに感じたことのない精神的な負担を感じていました」と、事件前の自身の状況を話しています。

 仕事と家族関係から来るストレス、その苦しみは彼の中に一つの願望を芽生えさせていきました。

「なにか、自分の全てを失ってしまうようなスリルを味わってみたい、と思うようになりました」

「昔好きだった女性の面影がある」という被害女性は、彼の求める「スリル」のための標的になりました。

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 事件のきっかけは、彼が偶然街中で彼女を見かけたことです。「偶然」とは供述していましたが彼女を見かけたのは会社と離れた場所にある彼女の家の近くです。本当に「偶然」だったかどうかはわかりません。

 知らない仲ではないし見かけたのなら声でもかければよさそうなものですが彼はそうしませんでした。

 女性の後ろを尾行し、家までついていきました。そしてこの日から彼は彼女の家へ通って路上から彼女の動向を見張り、彼女の出したゴミを持ち帰るようになりました。

「好きな女性が、他人に見られたくないと思っている物を集めたい」

 という動機からの行動でした。
 逮捕後、彼の自宅からは集めたゴミが大量に押収されました。その中には弁当やペットボトルの空き容器の他、使用済み生理用品も含まれていました。


すべてを失った51歳


 彼の犯行が発覚したのは彼女の玄関ドアポストにICレコーダーを設置しようとしているところを本人に見つかったことからでした。

 ICレコーダーを設置して捕まった人の報道を見て「自分もやってみよう」と思っての行動でした。

「設置してる時はスリル感とドキドキ感が満たされました」

 とその時の心情を話しています。犯行がバレた彼は逃げ出しましたがその日のうちに逮捕されました。

 彼は女性と交際した経験は何度もありましたが、同種の行為はしたことがなかったそうです。ストレスもありました。そのような性癖があったことも認めています。しかしそれだけが事件の原因とも思えません。

「自分の全てを失ってしまうようなスリルを味わってみたかった」

 50歳を過ぎて何故こう思うようになったかは彼本人にしかわからないことだと思います。全て、とまではいきませんでしたがこの願望のために彼が失ったものは決して小さいものではありませんでした。(取材・文◎鈴木孔明)

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