もし中心街で本格的な火災が起きたら...
合言葉は「歌舞伎町を火災から守れ!」。いよいよ、来年に迫った2020年東京五輪・パラリンピックに向け、東洋一の繁華街・新宿歌舞伎町の防災体制が強化される。4月3日、東京消防庁は管内の新宿消防署に「機動査察隊」を新設、早速、飲食店の入る社交ビルなどを抜き打ちでチェックした。この機動査察隊、夜間・休日関係なく24時間体制で動くというが、確かに「眠らない街」を本気で守るならそれくらいは必要だろう。
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この厳戒態勢にはもちろん、意味がある。歌舞伎町のような大繁華街で火災が起こった場合の被害は甚大になる可能性があるからだ。それは、歴史を見ればわかる。
まず頭に浮かぶのが、2001年9月1日に起こった明星56ビルの火災だ。火元の3階の違法賭博店と4階のセクパブ店で客・従業員など44名が死亡するという、戦後5番目の火災事故となったのだ。いまだ、原因は特定できていず、「闇社会」が絡む放火という"噂"も根強く残っている。
明星ビル以外でも火災は起こっている。記憶に残る火災をいくつかあげてみよう。すでに半世紀近く前になるが、タバコの不始末が原因で男性ひとりが死亡した「第6ポールスタービル火災」。出火したのが午前中ということで、明星ビルほどの大災害とはならなかったが、このビルは歌舞伎町の中心部にあり、なかには飲食店などが入っている。もし、煩雑した時間帯だったら、甚大な被害が出ていた可能性もあっただろう。ちなみに、このビルは現存し、目の前はランドマークとなっているゴジラホテルだ。
また、同じく大きな被害が予測される案件にホテル火災があげられる。なかでも、ラブホテルは密室性が高く、それだけにより注意が必要だ。近年の火災では2016年1月7日、「ホテルまつき」(現在は廃業)で火災が起こり、女性ひとりが死亡している。実はこのホテル、以前殺人事件があった場所で、いまだ犯人は捕まっていないという。この事実は住民の間で広まり、結果として "未解決殺人事件の呪い"という都市伝説も与えた。
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また、いまや歌舞伎町の看板観光地域である新宿ゴールデン街も、火災の魔の手に襲われたことがある。2003年に「F」(現在は閉店)という店で火災が起こり、ひとりが負傷。もっとも、この火災などを鑑みて、組合を中心に防災意識は高まり、いま現在も火の気には十分な留意は図られている。ただ、放火だけは完全に防ぐことは難しく、2016年4月12日昼過ぎに起こった火災は、6店舗4棟を消失する被害を発生させた。警察の発表によれば、犯人はホームレスの男だったという。
このように歌舞伎町は大繁華街であるだけに、もしもの時の被害は大きくなる傾向にある。東京五輪・パラリンピックに向けて、などと言うのは遅きに失した感もあるが、アジアを代表する歓楽街を守るため、たゆまぬ努力が必要なのは言うまでもないだろう。(文◎鈴木光司)