ともあき、のぶあき、よしあき、まさあき、まさひさ、まさひろ、やすひろ、やすお、よしやす、よしのぶ、よしゆき、てるひさ、ひろかず、よしき、よしお、やすお、つねお、としお、ゆきお、しげお、ゆういち、けんいち、けんじ、ケンジ、りゅうじ、しゅうじ、こうじ......。
まぎらわしい名前が並ぶ。それも昭和時代に流行ったような名前ばかり。昭和30年代の幼稚園なら、こんな名前がズラリ並ぶ光景も珍しくなかったろう。これは去る7月21日に行われた参議院選挙の比例区に出馬した、各党候補者の名前をシャッフルしたものだ。比例区の名簿登載者は数が多い上に、とにかく平仮名の名前の使用が多い。選挙法では候補者の通称使用が認められているので、こうした傾向になるのである。
それにしても平仮名が多すぎる。今回の参院選、選挙公報によれば、漢字のみの記載名は自民党は名簿登載者29人中4人、民主党は20人中たった1人しかいない。保守志向の強い日本維新の会ですら、30人中7人という少なさだ。選挙期間だけとはいえ、国政選挙という晴れの舞台で候補者が親からもらった名前を変え、大衆に迎合する平仮名に改めるとはあまり誉められた行為ではないだろう。
とくに日頃、韓国や北朝鮮の漢字廃止を批判するような保守系の政党が、選挙では積極的に漢字の名前を平仮名に開いているのは違和感を覚える(革新政党ならばどんどん平仮名とかカタカナにしても納得できるが)。
こうした平仮名の多用はなぜ起きるのだろう。
最初に思い浮かぶ理由は、候補者名の憶えやすさだが、これだけ様々な政党に似た名前が登録されていると、むしろ分かりにくくなる。自民党の名簿登載者のもと自衛隊一等陸佐・佐藤まさひさ氏は国会やマスコミ露出で非常に有名だが、漢字の「佐藤正久」のほうが印象が強く、平仮名にして写真を伏せたら逆に分かりにくい。残念ながら選に漏れたもとK-1ファイターの佐竹まさあきも「佐竹雅昭」のほうが、あるいは多く集票できたかもしれない。ひらがなの候補者名は、比例代表の投票用紙に候補者名を書く場合、面倒なのだ。
ネット上には「姓名判断で画数のよい表記にするため」「投票用紙に名前を書く時、一字一句間違えても無効票になるため難しい漢字の名前の人は平仮名にする」といった解釈が書き込まれていたりするが、これらは誤りである。画数に関してはたしかに気にする候補者もいるだろうが、比例区の場合政党名の表記でも有効なのだから、名前はあまり問題ではないはずだ。
書き間違えの無効票に関しては、開票事務規則は自治体によって差があるものの、全般に候補者名を特定できる誤差については有効と認めるところが多くなっている。候補者名の登録名にかかわらず、「鈴木」候補ならば「すずき」でも「スズキ」でも「SUZUKI」でも有効と認め、同姓の候補者がいなければ「鈴」だけでも認める場合がある。現行の開票事務で候補者名の有効判定はかなり柔軟に運用されているのだ。
よって平仮名候補を例にとれば、名前の平仮名表記で有効となる場合があるが、もともと白票と同じ意味で投票者が自分の名前や子供や孫の名前を書くケースも多く、本来の無効票となるべき票が、偶然、ある候補の票になってしまうこともありえる。
さらには殴り書きや誤字のために判読不明の票も、有効判定係の判断でどこかに繰り入れられることも考えられる。平仮名の名前はそのファジーさゆえに、意図せざる有効票になる可能性があるのだ。それが平仮名候補が増えた理由だろう。
それにしても日頃、愛国や道徳について理想論を語る政党が、そのようなセコい票数稼ぎのために候補者の名前を変更しているとしたら、道義的にいかがなものか。
保守王道を重んじる政党の候補であれば、親からもらった名前を一字一句変えることなく、「愛羅武勇」「仏恥義理」「夜露死苦」みたいに画数の多い難字でバシッとカッコよく決めたほうが印象もいいし、愛国意識の高い方々の支持も得られるのではないかと、日本を愛する一国民としては思うのだが(皆さんも声をあげていただきたい)。いや、もしかして愛国意識の強い方々は難字に弱いという判断から平仮名に......ということは、まさか、ありえないとは思うが...。
Written by 藤木TDC
Photo by 国家の命運 安倍政権 奇跡のドキュメント /幻冬舎
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