東京五輪特需で復興が大幅遅れか? 「今でも人材不足で入札が決まらない」

2013年09月25日 オリンピック 五輪 被災地 震災

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釜石市の津波避難道路から釜石港を望む

 2020年のオリンピックの開催地が「東京」に決まった。これによる経済効果は150兆円との試算もあり、少なくとも2020年までは景気が上向きになることが予想される。ある建設労働者は「これで仕事が増える」と喜んでいた。その一方で、被災地では「業者や人材が東京に流れて、復興が遅れるのではないか?」と懸念する声も聞かれた。

 東日本大震災から2年半が経った9月11日。岩手県釜石市を訪れた。復興のスピードがどうなっているか気になった。市街地のアーケード街近くにあったある飲食店は、津波による浸水と地盤沈下で、現在、津波被害のない内陸部に間借りをして経営を続けている。店を訪ねると「いい知らせがあるんですよ」と笑顔だった。

 店主らによると、元の場所に店を戻ることが決まったという。この飲食店が入っているビル自体は津波で流されず、残っていたが、一階と二階が津波被害にあった。早ければ10月にも再開に向けた工事が始まる。ただ、地盤沈下をしているため、かさ上げが必要だ。それは自腹だという。それでも、震災当初からすれば、遅まきながら前進した形だ。

 こうした復興の話も聞こえるが、同時に聞こえるのは、復興に関する事業の入札が決まらないという話だ。同市では、復興公営住宅やこども園の建設工事の入札が成立しなかった。震災復興工事の増加による職人不足などの影響だという。そんな状況の中で、東京オリンピック「特需」により、東京への人材流出が懸念されている。 

「人材不足で入札が決まらない中で、東京にオリンピックが決まった。これではますます東京に人材が集中し、被災地では人材が足りなくなる。復興が遅れてしまうかもしれない。仮設住宅の一年延長が決まったけれど、いつまでも仮設でいなければならないのか」(別の飲食店主) 

 東京都の試算では、施設整備と宿泊客の増加、それに伴う雇用者増による経済の波及効果は7年間で3兆円だ。一方、SMBC日興証券では、観光や飲食の消費額を都の試算よりも大きく見積もったため、4.2兆円となった。さらに、大和証券の木野内栄治氏は、首都高速の整備費用などインフラ整備を含めて150兆円と見積もっている。

 さらには、東京都は建設資材の上昇などを理由に、施設整備や用地取得にかかる経費が増額される見通しだ。招致段階では1538億円だったが、2500億円ほど増えて、4100億円となる見通しだ。こうした経済効果は人材を集中させる。被災地の復興が遅れないための手立てが必要ではないだろうか。

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Written Photo by 渋井哲也

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