「真理は醜いもの」とはニーチェが遺した言葉だが、この事件の真理がどのようなものなのか、なかなか見えてこない。東京地検特捜部は、日本最大の医療法人グループ「徳洲会」を一代で築いた徳田虎雄氏(75)を再び任意聴取した。
「10月半ば、特捜部によって、違法選挙を取り仕切ったとされる徳田ファミリーへの事情聴取がはじまったかと思えば、10月末には徳田ファミリーを追求する元事務総長などが、徳洲会側から業務上横領容疑で告発され、警視庁の捜査二課の家宅捜索を喰らいました」(社会部記者)
徳田ファミリーとは、虎雄氏の妻で医療法人『徳洲会』の副理事長(74)、長女でグループの資金源と噂される株式会社『徳洲会』(通称:カブトク)の代表(49)、そして同社取締役の二女(46)の3人を指す。当初は選挙違反の"入口"として、このファミリーが調べられていたが、徳洲会によって元衆院議員が代表のコンサル会社に支払われるべき代金を着服したとして、元事務総長が思わぬ逆襲を受けた格好だ。先の記者が続ける。
「カブトクは徳洲会系の病院が薬や医療機器を調達する際の業者との仲介役としての位置付け。カブトクには5~20%の仲介手数料が入り、年間約800億円もの売上げがあった。ファミリーは会社を通じ、濡れ手で粟の収入を得ていて、とくに長女夫妻は一昨年まで年間1億800万円もの報酬を受けていたのを虎雄氏に咎められ、現在は4500万円に減額されています。二女も、3年前、元麻布のマンションをカブトクに約2億円で買わせ、そのわずか4カ月後に自分の会社へ1億4000万円で転売していますし、カブトクと自分の会社の間で実体のない業務委託契約を結んで毎月200万円の報酬を受けている。秀子夫人も同じような契約でカブトクから年約5000万円の報酬を得ている。カブトクこそがグループの中核です」
医療法人からの巨額資金流出は決して看過できる問題ではない。その上、徳田氏についている弁護団はあるウイークポイントを抱えている。
「側についてる有名弁護士を、関係者は"彼で大丈夫かねえ"なんて言ってます。なぜって彼は、今回の徳洲会事件と似た公選法の案件で完敗していますからね。3年前の参院選に民主党から出馬して落選した人物が、自分の会社の従業員を使って電話をかけさせ、その報酬に会社から給与を支払う約束をしたことで逮捕されました。有名弁護士はこの被告について争ったけれど、最高裁までいって、今年負けちゃったんですから」
そんな状況にも関わらず、「特捜部には"単なる内輪揉めに手を突っこんでしまった"と懐疑的な見方もあるようで、捜査が進んでいるという話は聞かない」(前出の社会部記者)という状況だ。人それぞれの真理が複雑に絡み合ったこの事件。泥仕合が醜いことだけは間違いない。
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Written by 南田洋二
Photo by トラオ 徳田虎雄 不随の病院王
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